CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回インタビューを受けてくださったのは、株式会社雨風太陽・高橋 博之氏です。
高橋氏のこれまでのお話を通して、「心のコンパス」に従って動くこと、20代ですべき経験など、何度も読み返したくなるようなお話を聞くことができました。
自分自身を社会に表現すること、社会に働きかけることで人生を形作っていくことが“働く”ということだと思っています。
彫刻を彫っていくイメージに近いかもしれません。彫刻って、イメージはあっても彫った結果何がそこに現れるのかは、自分でもわからないし、他の人からも見えないですよね。
人生という作品を、完成に向けて彫り上げていくこと。つまり社会に自らを表現し続けることが“働く”なのかなと思います。
変わりましたね。20代の頃は、自分は何のために働くのか、何のために生きるかっていうことをすごく考えていて、そこから逆算して今何をするべきかって考えてたんですけど、なかなか思い通りに行かなくて。
途中で「人生って思い通りにならないんだ」って切り替えたんですね。
自然と一緒でコントロールできないものなので、“人生”の流れに身を委ねて導かれるがままにいこう。今目の前に与えられた環境の中で、自分がやりたいと思えること、自分の「心のコンパス」が向かうところで、とにかく一生懸命やろうと考えるようになったら、結果として歯車が回り始めたんです。
自分の心に嘘をつかずに生きてきたら、結果思い通りになっていたっていう感じですかね。
20代の頃は、憧れていた政治家の方の秘書をしていました。
その方の考え方、生き様に憧れて入ったんですが、今振り返ると人生で一番つらい、逃げ出したい期間でした。
「見て学べ」「自分で考えろ」という感じで、教えてくれないんですよね。やったこともないことを任せられたり。
当時は、なんて理不尽なんだと思いましたけど、今振り返ると、社会で生きていく上で基本的なことは全てそこで学んだような気がします。
あの時踏ん張ったことで、人生で一番自分を成長させられたと感じています。
秘書を務めたあと、28歳でふるさとの岩手に10年ぶりに帰って、県議会議員になりました。その後、311で震災があって、今度は知事選に出て、負けて、その後起業をして…。
という感じで、その都度心にぽっと芽生えた衝動というか、「心のコンパス」が動いたとき、もう何にも考えずにそこに突っ込んでいくっていうことを繰り返してきました。
うまくいくのか、自分に向いてるのか、この市場は勝ち筋があるのか、みたいなことは、ほぼ考えてないですね。
もちろん日々失敗したり恥ずかしい思いをしたりすることはいっぱいあるんですけど、失敗もプロセスに過ぎないと思っています。
さっきの話ともつながりますが、人生は作品なので。映画だって、山あり谷ありがありますし、失敗しないと味が出ません。
僕は失敗するなら本気で失敗しないとためにならないと思っていて。自分の心に従って失敗したら誰のことも責められないじゃないですか。
そうすると本気で反省するし、本気で次の人生に生かそうとするので、悔いはないし、他責もできない。結果、自分のためになるんですよね。
20代のうちは、憧れている人や会社のもとで働いてみてほしいですね。理由としては2つあります。
1つは、どこに行っても困難はあるので、そこをどう突破するかを学んでほしい。
憧れて、尊敬してる人でも、一緒に働いてみると嫌な所が見えてきたり、いろいろあると思うんですよね。そこから逃げないこと。
僕自身、「今いるところよりもっといいところが他にあるはずだ」という考え方をしていたこともありましたが、それではきりがないと気づき、自分が今いるところを少しでも桃源郷に近づける努力を、1ミリでも1センチでもしようと動くようになりました。
その経験が、今の成し遂げるための粘り強さに繋がっていると思います。
もう一つは、型を学んで、その型を破る経験をしてほしいですね。
「型破り」って、型がないと破れないですよね。だから、まずは憧れた人の真似を徹底的にして、自分のものにしていく努力をする。
そうして型ができてくると、途中で「自分だったらもっとこういうふうに表現するのに」っていう、憧れのさらに先に行きたくなる時がくる。まさに脱皮というか、型を破るときだと思うんです。
20代は自分のやりたいことをやっていくための土台を作る期間だと思うので、この二つを学べるように人への憧れで会社を選んでみたらいいと思います。
日本って「ちゃんとしろ」って言われて育てられるんですよね。学校でも会社でも、その環境の中にある評価基準で高く評価されるようにアジャストしなさいっていうのが「ちゃんとしろ」なんですよね。
それを繰り返してたら、何がやりたいかわからなくなってしまう。好きなことや、自分はこういうことを表現したいんだっていう気持ちに蓋をし続けてきたので、蓋が閉まってるんですよね。
なので、何か興味のあることがあったらそこに飛び込んでみてほしい。やってて違うなと思ったら、またアンテナを張って、面白そうだなと思ったら好奇心で飛び込んで…って。
そのうちに気づいたら、すごく時間を使うようになるものがある。それが好きなことだと思うんです。
多くの人は環境や条件が整ってからやろうと思って、やりたいことに締め切りを設けない。そうするといつまでたってもやらないですよね。
環境や条件が整わなくても、そのとき自分の中に込み上げてきた衝動に嘘をつかないで生きるっていうことが僕は一番後悔しない生き方だと思います。
「人生の目的」は考えて探しても見つからない。「心のコンパス」に従っていれば、パーパスが自分を見つけて道は自ずとできていきます。
進む方向を決めるときは、頭じゃなくて心で決めてほしいですね。
「人生」という終わりのある道を進む中で、社会的な評価、他人の目、世の中の“当たり前”…気づかぬうちに色々な制約を自分の基準にしてしまいがちな今、どれほどの人が「心のコンパス」に従えているのだろうと、改めて考えさせられました。
能登の被災地に復興支援でいらっしゃる中、今回のインタビューに丁寧に答えてくださった高橋氏。若者へのあたたかい想いと強いメッセージが感じられ、改めて自分の心と向き合いたいと前向きな気持ちを頂きました。
編集:冨樫 麦野
2015年2月に岩手県花巻市で設立された企業。
主な事業として産直アプリ「ポケットマルシェ」、ふるさと納税サービス「ポケマルふるさと納税」、食べもの付き情報誌「食べる通信」などを運営。「都市と地方をかきまぜる」というミッションのもと、サービスを通じて生産者と消費者を直接つなぎ、地方と都市の分断解消や過疎高齢化の課題解決に取り組んでいる。
2023年12月、東京証券取引所グロース市場に上場。