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常にトレンドの最前線を行くCEOに訊いた、
“求められ続ける”ために必要なこと

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#トレンドであり続ける#“大切なものを増やす”ビジネスを#変わらない部分

CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回お話を聞かせてくださったのは、ビートレンド株式会社・井上 英昭氏です。
「企業にとって一番大切なものを増やすビジネスをしたい」という言葉から始まった本インタビュー。井上氏の仕事観を紐解く中で、働き方・会社選びにおいて重要なことが見えてきました。

ビートレンド株式会社
井上 英昭
井上 英昭社長のプロフィール画像

明治大学法学部を卒業後、日本ディジタルイクイップメント株式会社(現日本ヒューレット・パッカード株式会社)に入社。
1995年に日本オラクルに入社し、同社での経験からデータベース・情報管理の重要性を認識。ネットグラビティ・アジアパシフィック株式会社にてインターネット広告を学び、2000年、インターネット接続できる携帯電話の普及をきっかけに、ビートレンド株式会社を起業。現在に至る。

井上 英昭社長のプロフィール画像

“すべての企業にとって大切なものを増やす”ビジネスをしたい

井上さんの“働く”ことに対するお考えをお聞かせいただけますか。

社員にとっては、給料はできるだけ高く休みはできるだけ多い方が良いと思うので、経営者として社員にそういった環境をできるだけ用意することが重要だろうと考えています。

そしてもうひとつ企業として大切なのは、当社のビジネスでどういう社会性が発揮できるかということです。
当社の成り立ちについて、少し大きな話をしてもいいですか?

ぜひお願いします。

起業する時に「“すべての企業にとっていちばん大切なもの”をテーマにした会社をやれば、いちばん長持ちするだろう」と思ったんです。また、社会的な貢献度も高いと。

企業にとって一番大切なものは何かというと、“お客様”です。会社はお客様からお金を頂いて、社員に給料を払っているのですから。
だから、大事なもの=お客様が増えるビジネスをやっていくのがいいなと考えました。

そしてそれをITでやると考えた時に、SaaSで伸びているところはどちらかというと「このシステムを使えば、これだけコストが削減できます」といった、コスト削減系のサービスを扱っている会社が多いですし、IT業界はそこから発展してきていますが…
私は売上が上がる、つまりはお客様が増えるという方向性でのITのほうが楽しいし、面白いなと思ったんです。

“不要なものを減らす”ではなく“一番大切なものを増やす”…確かにそのほうがポジティブですね。

はい。ここから経営理念の話になるのですが…社長ではなくお客様が社員の給料を払ってくださっているので、経営理念の最初は「私は(=社長個人)」ではなく「私たちは(=社長も含めた社員および関係者全員)」なんですよ。

当社は様々なサービスを展開していますが、どのサービスもこの経営理念から派生したものです。
企業の経済活動を活性化させるシステムを提供することで社会に貢献していくという考え方は、創業当時から揺らいだことがありません。これがビートレンド社、ひいては私の仕事観につながるかなと思います。

【編集注】ビートレンド株式会社経営理念:私たちは、顧客価値を創造するプラットフォームを提供し続けることで、社会に貢献します。

時代を正しく捉え“トレンドであり続ける”努力をすること

井上さんから、会社選びのアドバイスを頂きたいです。

よく“恐竜が絶滅した理由”がたとえ話として出されるじゃないですか。いわゆる変化に対応できた種が生き残っていて、強い種が残っているわけではないという話ですね。私も割と激しいIT業界の中で生きてきて、勤めていた会社が買収されたり、次に勤めた会社が日の出の勢いで伸びてゆくところを見たりもしました。

変化に対応し、適応したものが生き残るということで“ビートレンド”を社名にしたんです。いつもトレンドであれば、生き残れるんですよね。会社選びもこれと似たところがあると思います。
なにがトレンドなのかを見ながら、その会社がトレンドであり続けそうなら入社すればいいし、あるいは今いる会社を自分が変えていけるなら、変えながらそこにい続ければいい。

ただトレンドであり続けることって難しくて、やっぱり自分自身が時代や環境に適応していける人のほうが、ビジネスパーソンとして成功していると思います。
大企業を経験してきてヘッドハンティングでCEOになった人もいれば、創業100年の会社に新卒入社して変化させてきてCEOになった人もいるわけです。とにかく自分から変化に適応できる人は、転職してもどんな環境にあっても成功するんです。

会社選びに限って言うなら“変化に適応できる”ところを選んだほうがいい。でも本当に成功するのは、会社任せにせず自ら変化に適応できる人だと思います。

なるほど。環境選びと自分自身と、両軸で考えられたらいいですね。

もちろん公の仕事だったり創業300年の和菓子屋さんだったり、変えちゃいけない組織や仕事もあると思います。それも貴重なものであって、なんでも変化を勧めるわけではありませんが、私が志しているIT業界なんかは特に、いつもアメリカや世界の動きを見て変化対応の準備をしておかなくてはいけないんです。

当社も一時は開発した携帯電話向けのシステムがトップシェアになって、大手企業もその領域から撤退するくらいの状態になったのですが…「さあこれから」と思っていた時に、iPhoneが出てガラケー自体が無くなりましたからね。

ただその時にすばやくスマホ対応に切り替えたからこそ、細々ながら生き残っているのだと思います。
今後スマホがなくなることもあるかもしれないので、あまりそれに固執せず、常に「今これがトレンドだからやっています」というスタンスを大事にしておきたいです。

井上 英昭社長の写真

会社選びのカギは、その企業の“変わらない部分”

実体験に基づいたお話ですごくわかりやすいです。

今やスマートウォッチで精算する人もいますし、この間大阪へ出張したら駅の改札を顔認証で通っている人がいました。まだ実証実験段階らしいですが、もうスマホすら持たず改札を通れるんだと驚きました。

ガラケーがスマホに変わったように、手乗り文鳥みたいなロボットが出るかもしれないし、そこでユーザーインターフェースが変わるかもしれない。
ただそれでも、今我々が重心を置いている“顧客情報管理”が重要であるということは変わらないでしょう。本質を見失わず、サービス自体は時代に合わせて変化させてゆくことで、トレンドとして求められ続けるのではないかと思います。

軸はブラさず、ですね。

はい。ただだからこそ、会社は“変わらないところ”を見て選ぶべきだとも言えます。
変化に対応し生き残っていくために、事業計画やサービス、組織体系は日々変わってゆきます。その中でも変わらない部分、経営理念を見て、良いと思えるところを選んだほうがいい。

例えば今当社はアプリにも注力していますが「アプリの会社だから」と入社してしまうと、当社がアプリ事業をやめたら、その人はうちにいる理由がなくなってしまうじゃないですか。
だからぜひ若い皆さんは、その企業の“変わらないもの”はなんなのか。そしてその変わらない部分が、自分のやりたいことと合致しているのかを考えて選んでいただきたいと思います。

編集後記

変化の激しい業界において、“普遍的なもの”を見つけることも、それを見失わずに磨き続けることも、並大抵の努力ではできないでしょう。
しかしだからこそ、磨き上げられた価値観というのは、何物にも代え難い輝きと強さを持つのだと思いました。私も“大事なこと”を見つけられるよう、自ら変化に対応していくという柔軟性を持ちながら、目の前の仕事に努めていきたいと思います。

編集:佐藤 由理

「ビートレンド株式会社」概要

スマートフォンやタブレットを活用し、企業が顧客との接点を統合的に管理・運用可能なスマートCRMを実現するプラットフォーム『betrend』を開発。2000年の創業以来、マーケティング手法の変化にあわせた機能追加を行い、流通業や飲食・サービス業を中心に幅広い業種・業態に導入されている。
また外部システムとの連携を強化し、導入企業のOMOおよび店舗DX実現促進のための開発を続けている。

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