株式会社クレア・ライフ・パートナーズの代表取締役社長・工藤 将太郎氏にインタビューしました。「働く=人生だ」と語った工藤氏。そう思えるようになるまでのことを伺う中で、その言葉の重みがわかると同時に、仕事・人生を充実させるためのヒントも得られました。
会社員になる時には「働くものだろう」と思っていました。それならより自分の条件に合った会社を選びたいという発想で、働くことの意味について深くは考えていなかったと思います。
独立してからは、会社員の頃以上に“生活のため”という意識が非常に強くなりました。
僕が独立したのは2012年。政権が民主党から自民党へ移り、日銀の総裁も変わるなど、非常に日本が変化した年でした。また就職先の人気ランキングに大手が並んでいるような時代でもありましたから、起業や独立は“リスク”としてしか見られていなかったんですよね。
そんな中で独立した僕も、感覚はさほど世間と変わらずで。“生活をするため”、あとは“会社員時代にしたくないことを避けるため”というレベルの意識で創業をしてしまいました。
もちろんやりたいことや実現したいこともありましたが、最近の起業する若手の経営者の方々の志の高さや、視座の高さから比べると、今となっては、非常に稚拙であり自分のことのみを考えている時期だったなと思います。
ただ、売上が上がるようになり、社員を数名採用して人件費を払うようになった時から、すこし“働く”ことへの概念が変わりました。
たくさんの商品・サービスがある中でうちを選んでくださったという“お客様の選択に対する責任”と、時間という一番大事な資産をうちの会社で使ってくれる“社員の人生に対する責任”を感じるようになったんです。
創業して1年が経つ頃には、自分の生活どうこうよりも、かかわった人に対して責任を果たすために働かざるを得ないというのが、正直な感情としてありました。
また、僕は“まずやってみる”主義なので、それまで事業計画を立てたことがなく、第4期に初めて事業計画をつくり始めたのですが……事業計画をつくるようになってようやく、会社をどうしていきたいかとか、この会社である意味とか、我々はお客様にどんな価値を提供できているのかなどを考えられるようになって。それからは、徐々にですが、働く=人生と捉えるようになりましたね。
はい。働く=人生だからこそ、会社の事業計画書上に僕の個人的な将来やってみたいことを明記していますし、組織構成や人事制度も、売上利益を最上位持ってくる計画や制度ではなく、社員が望むライフプランを実現できるような舞台となることを軸に設計しています。
例えば人事面談では、仕事における目標とプライベートにおけるやってみたいことを聞いて、プライベートでやってみたいことを会社の計画に乗っけるということもやっています。
実際「海外で生活したい」と話してくれたメンバーには、具体的に何年に海外へ行くことを目標に仕事を進めようと話をして、実際2020年に入社したメンバーが翌年海外に赴任し事業を開始したり、別のメンバーでは2年後には海外で子育てと仕事をできるように会社とメンバーで計画を進めているという例もあります。
僕にとって働く=人生だからこそ、うちの船に乗ってくれているメンバーにとっても、CLP(クレア・ライフ・パートナーズ)での仕事を単なる仕事ではなく、CLPでの仕事=CLPで過ごした人生と言い換えられるような環境にしたいと思うんです。
不変的な正解みたいなものがあれば、日本人ってもっと良くなっていると思うんですよ。でもそうではない。「これをこうしたらこうなる」という考え方ってとても安易なシミュレーションで、その考え方に基づいて選択しても正解にたどり着くとは限らないんですよね。
時代のセオリーに則って選択したとしても、それで良かったと思える期間は限られています。基本的には“自ら体験しながら変化していく”ことでしか、成長はない
と思います。変化に合わせて自分をアップデートしていくことが必要なんじゃないかなと思います。
そのために、心構えとしては“変化があるということ”そして“変化が起きた場合には自分を変える必要がある”と理解しておく。この2点が重要だと思います。
僕も最初からできたわけではありませんが、その部分は先ほどもお話した“責任感”が育んでくれた気がします。
責任感……やらなきゃいけないという気持ちがあると、やらざるを得ないですよね。その過程に“変化”もあるのだと思います。
仕事をしていれば業績が悪くなることもトラブルや大問題も、反対に面白そうな事業を見つけることもあります。その都度起きたことに対して全力で向き合っていれば、やらなくてはいけないことが出てくるし、実現のためにあるべき姿を辿っていく……その中で勝手に変化するものなんじゃないかなと。
“起きたことから逃げなければ、自然と変化しているはず”というのが、変化に対する自分なりの考え方ですかね。
そうですね。メンバーとはトラブルも一緒に乗り越えていきたいし、彼ら彼女らのライフプランも実現させてあげたい。一方で会社の成功を通じて僕もライフプランを叶えたい。 つまり僕らはある種の運命共同体だと思うと、みんなとの時間がいっそう大事に感じられます。
一緒にいたいと思えるメンバーだけを自分の船に乗せたいし、乗ってもらったからには航海を一緒に楽しんでいきたいですね。そのために最も大事なのは時間ですから、より良く共有していきたいです。
世界を一周した時に、インドのバラナシというところで占い師さんに手相をみてもらった時に「君は45歳で大病する」って言われまして。初めはショックでしたが、せっかくなら本当に45歳で大病を患ってしまったバージョンの人生も考えておこうと思いました。人って、人生に期限がついた瞬間、時間を意識するものなんですよね。
だから僕は、45歳までと46歳からと、人生を2回に分けて回転させる予定でいます。今41歳なので、人生を90歳でとじるパターンで考えると82歳。
権限を委譲したり、資産管理も社員に任せたり、事業計画も45歳までとそれ以降とで分けて考えたりしていますし、1回の食事でさえも大事にするようになりました。それからさらに、人生が充実しているように思います。
ワタミの渡邉さんが「夢に日付を」とおっしゃっていたのですが、本当にその通りですね。
目標に対しては必ず日付、そして金額を入れるべきです。「いつなにをしたい」「そのためにいくら必要だ」と常に意識しておくことで、働くこと……人生が充実していくと思います。
「アドバイスなんてできる立場ではないので」と笑いながら、ご自身の体験を飾らずお話しくださった工藤氏。等身大の姿が素敵でした。
どのエピソードも学びになりましたが、特に印象的だったのは“目標に日付と金額を入れる”というお話でした。
「いつか」では叶わない。でも「この日」と決めたら、人生は動き出すーー私もまずは、日付と金額を入れるところから始めたいと思います。
編集:佐藤 由理
2012年設立。ライフマネートレーニングや資産形成コンサルティングを行う企業。生命保険・不動産投資・投資信託など国内外の資産商品を個人/法人に合わせてカスタムし、オンリーワンの資産運用方法を提案している。 1つの商品ジャンルに偏重しない効率の良い資産形成をテーマに、ファイナンシャルプランニング・ライフプランニングサービスの他、ファイナンシャル・ウェルビーイング事業、人財紹介・キャリアサポートも展開。