CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回は株式会社ドットラインの垣本 祐作氏にお話を伺いました。
医療、福祉、教育、イノベーションなど、社会課題の解決をめざして多彩な事業展開を行うドットライン。その背景にある、垣本氏の仕事観・原体験とは?
「いかに批判されない方法を選ぶか」みたいな考え方が世の中には充満していて、ネガティブな方向でばかり議論や意見する人が多いなと感じています。基本何かを決めて実行する時は「誰かの“良い”は誰かの“悪い”」であって、全員にとって“良い”ことなんてあり得ないので、物事を多面的に見る力を養う必要があると思います。
僕はこの風刺画が好きで…要は何をやっても誰かには批判される世の中なんですよ。誰かの意見に左右されるのではなく、自分が信じる正しさを考えて、その信念に基づく価値観と働き方を選択したほうがいいと思います。
会社で働くとは、同じ船に乗って同じ方向を目指すものだと思っています。つまり、理念達成への航路をリスクを共にして役割分担をして進んでいくもの。自分のスキルを活かすために職種・業種で会社を選ぶのも良いのですが、本質はそこではなくて、その会社なりの正しさ=価値観と、自分の価値観が合うかが大事なのではないでしょうか。
ちなみに当社では、理念達成の目的を船旅として例え、その航海の船員としての意味で、ドットラインの一員のことを“クルー”と呼んでいます。
また仕事とは信頼関係の構築ですから、もうひとつ大事なのはそこで働いている人を信頼できるかどうかですね。会社は偶像みたいなものであり、その中身は人なんですよ。世の中を分解していくと、全てが人と人との信頼関係でできている。
僕らのキーワードは“成長”ですね。できないことを受け入れる力ってすごい大事だと思っていて…ドットラインでは、成長を「できないことをできるようにする」と定義しています。
自分のできないことを受け入れて、変えていこうと自分自身の行動を変化させて、成長していこうと思えること。これが重要だと思っていて、特に新卒社員にはもうこの話ばかりしています。
できないことを受け入れられない人って割と多いですし、自分を部分的に否定することなのでとても難しいことです。僕自身も自己成長のために意識的にやり続けてきているし…すごく大事にしている部分ですね。
またこういった考えだからこそ、できないことについてネガティブではないというのも当社の特長かもしれません。むしろポジティブに受け止めるというか…「失敗は部分的成功」とか「ピンチはチャンス」と社内用語として定義しているくらいで(笑)。
社会課題も僕らのチャンスだと捉えて「日本を課題解決先進国にする」といった前向きな考え方をしている会社です。
仕事は人生の多くの時間を費やしますから、社会や自分にとって最も意味のある仕事をしたいと強く思っています。一度きりの人生なので、仕事に価値を見出せないのは非常にもったいないです。
お金とは価値を数値化したもの。つまり相手にとって価値のあることをすればお金を稼げるわけですよね。価値をもらうことばかり考えているとダメで、“価値を提供したからこそ対価をいただける”という順番が正しい。
それには相手にとってなにが価値あるものか理解しないといけませんから、働くとは自分を知る、相手を知る…人間を知るってことなんですよね。
ですから僕は、仕事とは人間学だと思っています。人間をよく知ること、最上級の学問じゃないですかね。すべての学問の総合格闘技みたいな感じじゃないですか。
あと“プライベートを充実させるために働く”みたいな考え方はよくないんじゃないかと思っていて…「仕事は人生の大半を占めるのに、どれだけ時間を無駄にしているんだよ」ともどかしく感じます。
仕事って、一生懸命やらないと上手くならない。上手くならなければ当然楽しくならない。でもそれには努力が必要ですから、上手くなる前に諦めちゃう人が多いんですよね。
そういえば一時期「好きを仕事にする」というキャッチフレーズがインターネット上で流行りましたが、僕は「仕事を好きになる」という逆の発想が正しいと思っています。ずっと好きを探し続けるより、今やっている仕事を好きになる努力をしたほうが、確実に人生を楽しめると思うんですよ。これは確か、医学者であり作者の養老孟司氏も同じようなこと言っていました。これが本質だと思います。
仕事を好きになるには努力をすること、仕事をできるようになることが必要。ただそうして他人よりできるようになれば、その仕事を好きになるし、人生も楽しくなる。人生のたくさんの時間を費やす場所(=仕事)が楽しくなるって、最強じゃないですか⁈
今も疾患や障がい、貧困などで普通の安全で安心した暮らしができない人たちが世界中にたくさんいますが、多くのベンチャー企業はそれを無視してAIやデジタル化など、次へ次へと技術革新を進めようとしています。
でも「そうじゃない、本質的な課題解決は人間中心の“幸せ”を考えるべきでしょ」って、僕は思うんですよ。
だから僕たちは、医療福祉のベンチャー企業として日の当たらない場所で苦しんでいる人たちを救うという、本質的課題の解決へ注力していきたい。「世の中の幸せのインフラを作る」という目標を掲げ、今後も多様なサービスを展開していきます。
もともと幼少期に僕の家が貧乏だったということもありますが、何より大きかったのは祖母が介護状態になったことと、福祉の大学でいろんな現場を見たことだと思います。
どういうわけか幼少期から、社会の日の当たらないところ、生命にかかわる場面をたくさん見てきたんです。
学生時代には福祉関係のアルバイトも色々やりましたね。重度障害と言われる方たちの介護をしたり、いわゆる「困難事例」と言われる、自治体でもサポートが難しいような人たちの支援に入ったり。具体的には、お風呂に10年間入ってない浮浪者とか、電波が怖いと言って自宅に入れず庭で寝る人とか…そういう人の生活を成り立たせるということを学生時代から経験させてもらいました。
差別を受ける人や社会のルールからこぼれ落ちる人をたくさん見てきた経験がベースにあって、大好きな祖母の死に後悔を残したことを契機に、人間の本質的な社会課題を解決したいというところに行きつき、ドットライン創業に至りました。
単なる医療・福祉の会社じゃなく、少子高齢化社会や共生社会、差別などの「本質的な課題を解決している会社」として、今後も成長し続けていきたいと思います。
お金は価値の対価、信頼関係を築くことの重要性とそれに必要な努力、その先にある“仕事を楽しいと思える”ひいては“人生が好転してゆく”未来…それぞれ独立して見える点たちはすべて一直線上にあるのだとわかり、やるべきことがクリアになった気がします。
人間を知ることへ一生懸命になることで、点と点が結ばれ、星座のように未来が浮かび上がってくる…そんな希望を抱かせてくれるインタビューでした!
編集:佐藤 由理
「地域の『困った』を『ありがとう』に変える。®︎」をビジョンに掲げ、社会の課題解決をビジネスで実現している首都圏最大級 医療・福祉 事業所数 千葉県No.1の医療福祉ベンチャー企業。
2011年の創業以来、訪問看護や在宅医療、ナーシングホーム、児童発達支援・放課後デイや就労支援など医療・福祉分野、学校法人や税理士法人、経営コンサルティング、ローカルメディアなど教育・イノベーション事業を展開中。