CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回インタビューを受けてくださったのは、EXPE株式会社・田口 弦矢氏です。
田口氏の仕事観から原体験までを伺っていく中で「“人の可能性”とはなにか」が見えてきました。
私の就活での選択肢は2つあって、1つは父が水産卸事業の経営をしていたので、それを継ぐかもしれないと思い、貿易ビジネスを学べるところという意味で商社を目指していました。
もしくは、大学の最後の1年は当時黎明期のインターネット業界でインターンをしていて、インターネット業界で経営者たちが生まれるフェーズを見ていて、この業界が伸びるならいつか携われたら面白いかもと思ったことと、「どういう部分のプロになったら、この人たちと一緒に貢献できる仕事をできるのかな」と考えたんですよね。
それで、人かお金のプロフェッショナルになれば組織や会社から必要とされる人になるだろうと。当時は人のほうに興味があったので、人のプロになるために当時の創業者の宇野さんの創業の想いをみて、「社会に価値ある何かを残す」と謳っていた、インテリジェンス(現・パーソルキャリア)に入りました。いまだに出身者同士で「何かを残しているか」を議論するネタになっています。
私は高校生や大学生に「まず会社をつくれ」って言ってるんですよ、常に。高校生か大学生の間に会社をつくって、就活するまでにできた事業・やりたいことがあればそれをやりなさい。もしくはそれをやっている会社が見つかったならその会社に入ればいいし、何も思いつかないなら、大手さんに就職しなさい、就職するなら会社は休眠すればいいと。
会社をつくると「なぜその会社を立ち上げたのか」「今、なにをしているのか」「これから何をしたいのか」って問われますよね。それに答えなきゃいけないじゃないすか。そうすると、ずっと自分の生き方イコール自問自答みたいになるし、話し続けているうちにその言葉が本物になってくるし、それを実現するために動き始める。それがいいと思うんですよ。
話すことは、最初は理想論でもいい。話しながらも「実際は違うな」と、自分の中の違和感に気づくじゃないですか。それも大事な自己認知だし、言葉の裏側には言いたくないこともあるはずだけど、それでいい。自分の言っていることと人生をイコールにしようと、時間をかけて調整していけばいいんですよ。
就活も、結局は自分の人生・キャリア宣言ですよね。いくつかある選択肢の中から「この会社でこれをやりたいです」って宣言しているだけ。
ただそれも、自分の軸や選択肢を複数持った上で話さないと上っ面な答えになるし、見抜かれる。それを持つためにはやっぱり、1円企業でいいから会社をつくったほうがいいんじゃないかと思うんです。そして経営者になると必要なことや、数字を自分で管理してみることでわかることがあります。自分の給与の意味が、税金の意味が本当にわかる。
そういう経験や選択をしながら前に進む方が、“自分の人生を生きている”って感覚を持てると思います。
例えばサイバーエージェントって「21世紀を代表する会社を創る」と言いながら、21世紀を代表する会社に定義があるわけではないじゃないですか。私は、その余白が面白いと思っていて。
テーマはあるけれど、余白は自分で考えて自分で実現するものだから、それぞれが考えてやるという…集合体の中でも個人がちゃんと自立して役割を考えて働くことが原理原則だと思っているんですね。
ですから私はどの会社でも「何を実現する世界を創るのか」「どういう方々に提供するのか」にこだわっています。プロダクトやサービスを通して社会に何らかの価値をつくることだったり、社内に機会・環境を提供することで次の挑戦につながる人材を輩出し続けるみたいなことだったり。
マイルストーンはあるけど、ゴールは永遠にない。働くこと=死ぬまでできることって感覚ですね。
私は過去自慢をしたくないんですよ。昔はすごかった話するのってかっこ悪いし、過去の話をされてもほぼ使える話ないじゃないですか。“今何をやっているか”と“これから何をやるか”だけが大事だと思っているんです。
教えるにしても、自分が同じところに立って一緒にやっていなかったら何にも意味がない。現役で今同じようにやってるから伝えられることがあるし、後輩たちが頑張っていると「同じぐらい頑張らないと、私は彼らの役に立てない」と奮起します。
私自身、先輩たちからたくさん頂いたからだと思います。学生の時から、何者でもない私に対して応援したり手伝ってくれたり、機会を提供してくれた先輩たちがめちゃめちゃいたんですよ。そこで学んだものを活かしていることが、実は多い。
先輩たちからたくさんのものをもらったけれど、私が先輩たちに返せるものはないので、後輩たちへペイフォワードしているって感覚です。後輩たちにも「私に返さなくていいから、後輩たちに返しなさい」と伝えているだけなので、私がすぐれているわけではなく、普通にもらったものを次の人に届けているだけって感じですね。
もしかすると中学生〜高校生時代の影響の方が強いかもしれませんね。
私は多動で、学校でも色んなことをやってたんですよ。中学は運動会を仕切る運動委員会の委員長だったし、部活の部長だったし、写真部と陸上部(笑)もやっていた。高校も生徒会やって、文化祭の委員長やって、部活もいくつも掛け持ちしていました。
それがなぜ面白いかっていうと、自分の中に“want”があるものを全部やっているのと、コミュニティが変わると関わる人も全部違ったから。人って自分の中にキャラクターが何人もいますよね。コミュニティによってその多面性を出せるのが面白かった。
はい。輝ける場所や才能を見つけるためにも、コミュニティをたくさん持っておくことは重要だと思います。
コミュニティが身近に1つしかないとしんどいですよね。学校しかなかったらそこを拒否してこもる選択をしてしまうこともあるかもしれない。でも例えば部活や習い事や趣味や推しといった別の世界があって、そっちが楽しかったらバランスを取れる。
だから私は今、その人の未来を想って、選択肢や可能性を見い出す機会を提供したり、自己認知をするためのコーチングに近いことだったり…人が変わるきっかけをひたすらつくっています。
「人には必ず輝ける場所がある」。力強い一言に、心を強く揺さぶられました。
他方にコミュニティを持ち、他者と向き合う中で自分の“本当”が見えてくる。そしてそれは未来を拓く力になる。まずは逃げずに、自分と向き合い続けようと思いました。
編集:佐藤 由理
2019年設立。日本中の地域に貢献できるプロジェクト・事業を通じて、新たな居場所をつくりだすことを推進している。
主な事業内容は、事業創出・人材輩出・コミュニティ運営事業、企画・プロデュース・教育・後継事業、PR・ブランディング・webデザイン制作事業など。