CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回は、株式会社ファイバーゲートの代表取締役社長執行役員、猪又 將哲氏にお話を伺いました。
「働くと仕事は違う」という前提のもと始まった本インタビュー。改めて“仕事”への姿勢を正される、特に20代の社会人へ読んでいただきたい記事です。
前提として僕は、“働く”と“仕事”は違うと思っています。
働くは“人が動く”と書くので、経済的な報酬が無くても働くとは言えます。例えば主婦の方って、金銭的な報酬は得られないけれど、家事育児を含めて「働いている」とは言えると思うんです。
対して仕事は“事に仕える”と書きますよね。またビジネスには必ず経済的合理性が付きまとう…つまりは事(ミッション)のもと、成果を求められるのが“仕事”なんですよ。
あくまで僕の価値観ですが、人が動いてさえいれば、働いている。でも仕事は、ミッションに対して成果を出さなくてはいけない。これが明確な違いです。
だからこそ、社員には「仕事をしろ」と言っています。みんな作業になってしまっているんですよ。作業ならアウトソーシングすればいい。僕らは成果が付きまとう“仕事”をせなあかんのです。
その上で、仕事の価値観としてお伝えするなら、仕事をする時には「お金を中心に置いちゃいけないよ」ということを伝えたいですね。
価値観の中心には“成長”とか“お客様から感謝される”とか、そういったことを据えないと間違ってしまいます。それに、報酬は価値観として持たなくても、成長すれば絶対についてくるんですよ。
僕の価値観の中心は、よく言われる言葉ですが“成長”です。
僕の中での成長は、頂上のない山を登っているようなものですね。当然ながら、10年前に見た景色と今見ている景色って全く違うんですよ。頂上が無いので登り続けるしかない。僕はこれが面白いし、そのために仕事をしています。社員にもこの面白さを味わってほしい!
昨日ちょうど、新卒の内定式をしたのですが、内定者から「社長がワクワクするのはどんな瞬間ですか」って聞かれて、同じことを話しました。
僕はニッチトップを狙った事業を展開しているので、他人がやっていないことをやるわけじゃないですか。それをビジネスモデルに起こして、事業計画を立てて…と具現化していく瞬間は、自分自身もとても成長しているし、面白いです。それがワクワクすると話しました。
まだ内定者はなんのこっちゃわからないと思いますが、起業家ってみんな同じ感覚を持っていると思いますよ。
そうですね。あとはね、アイディアとビジネスモデルって似ているけど、全く違うんです。
ビジネスモデルって、ヒト・モノ・カネという経営リソースを使って実際に雇用を生み、お金の流れをつくり、マネタイズしてから利益を出すってことじゃないですか。これはね、めちゃくちゃ難しいわけです。それをさらにスケールさせていくとなると、もっと難しい。
でも難しいからこそ、具現化していく時にはドーパミンも当然出ているし、「本当に成長しているな、今」って感じる。社員にもこれを味わってほしい。
そしてそれは“働く”っていうイメージでいては、到底成しえないんですよ!
やっぱり一朝一夕でこういう考えに至ったわけじゃなく…小さな積み上げがすごく重要でその上で今があるわけなんです。だから“昔こうだった”とか、その変遷はあまり覚えていません(笑)
覚えているのは、単純に“大人びた子どもだったよな”ということくらい。
20年後に振り返ったとしても“またあの時は僕もまだまだ子どもだったな”と思うと思います。頂上の無い山に登っているって、そういうことです。
一口に“会社選び”と言っても、社会を一度経験しているかどうかで見るべきところが違うと思います。
新卒であれば、とにかく早くから裁量を持たせてもらえるような会社に行ったほうがいいと思います。そう考えると大企業はなかなか難しいですよね。だんだん若い人を引き上げようという会社も出てきていますが、実際は旧態依然としていますよ。ベンチャーの良いところは、大企業が10年かかってやることを2年でやれること。そこに携わることは、自らのやりがいや成長につながります。
ベンチャーってやっぱり、ハードワークなんです。スピード感や権限を与えて、大企業よりも時間を圧縮して働いているんですよ。所詮ビジネスは時間との勝負ですから、そうした企業で働くことは自分を非常に成長させてくれます。
若いうちはそういう環境で自らを鍛えて、第二新卒以降は大企業に行ったり起業したり、またベンチャーに行ったりしてもいい。
はい。転職回数の多さをネガティブに見ているのは日本くらいですよ。
キャリアアップのための転職は推奨されるべきです。セカンドキャリア以降は、視座を高く持ち、自分の実力をどんどん試し、時間を圧縮できるよう自分ができるだけ早く成長できる会社に行くことが大事です。
ただそうすると、優秀な人ほど辞めていくことになりますから、企業は魅力的な組織づくりに努めなくてはいけない。人と企業とで、こういう良い循環を生み出さなくてはいけないと思います。
大谷翔平選手って、基本的なプロ野球のプレーヤーが100年努力してもできないことを一瞬でやってるわけですよ。これってね、時間を圧縮しているってことなんです。
彼の年俸って、寝ている間もお金を稼いでいるくらいの額じゃないですか。これはまさしく時間の圧縮です。
それは大谷選手自身が夢に日付を入れて努力をしてきたから。僕たちも同じで、そういうふうにならなきゃいけない。そのためにはもっと本気で“仕事”をせなあかんと思います。
「頂上の無い山に登っているって、そういうこと」
猪又氏の言葉1つひとつに感銘を受けつつ、まだ実感を持って理解できないのは、どこか“働く”という感覚が抜けないからだと思いました。
まず、自分は今“なにに仕えているのか”、そして“成果にこだわれているか”。この2点を問いかけるところから始めたいと思います。
編集:佐藤 由理
2000年設立。2003年より事業の本格活動を開始し、2004年より集合住宅向けネット無料サービス事業を開始。札幌、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、台湾にオフィスを構える。
18年に東証マザーズへ上場、翌年東証プライムへ上場を果たした。近年では再生可能エネルギー事業を開始するなど、絶えず進化を続けている。