フィグニー株式会社代表取締役、里見 恵介 氏にインタビューしました。里見氏は「ゲームが好き」という気持ちをエンジンとして、大学中退、プログラマーへ転身、フィグニー設立まで歩んできたといいます。
誰もが一度は憧れ、しかしどこかで諦めてしまう「好きを仕事にする」ということ。里見氏が叶えられたのはなぜなのか、そして、今見ている未来とは_?
新作が出るとクリアするまで学校に行かないような子でした(笑)
19歳で初めてパソコンを買ってもらって、ファイナルファンタジーシリーズにどっぷりハマりました。大学へはすぐ行かなくなり、1日16時間ぐらいゲームをしていました。
インターネット上で何千人もの人間が同じ空間にいて、チャットをして、1つの目標を目指す。強い敵を倒すのも、難易度の高いダンジョンに挑むのもありだし、ゆっくり釣りをするのもいい。僕はそこで暮らすようにして遊んでいて、すごく楽しかった。
だけどやりすぎてしまって大学を中退することに…働かなくてはいけないと思い、ゲームを辞めました。
3ヶ月くらいは放心状態でしたね。どうしてもゲームを諦めきれず、ある時「こんなに人を夢中にさせるゲームをつくれるなら、生きていてもいいか」と思いました。
それでプログラミングの学校へ行かせてもらったら、自分に向いていたしとても楽しかった。そのままプログラマーになり、上京したという経緯です。
情熱を注ぐのはなんの問題もなかったんです。
ゲームは眠くても腹が減ってもやっていたし、それはプログラミングも同じでした。プログラミングを好きになったことが、僕にこの人生をくれたと思っています。
全然違いますね。好きってだけで仕事にするのは難しい。悔しいからクリアする、みたいな方へ舵を切れるかが分かれ目かなと思っています。
僕の場合、親父や兄貴がゲーマーだったので自然とゲームに触れるようになりました。強い敵と出会っても、放り投げない程度にはゲームが好きだったから、悔しくてクリアしてと繰り返すうちに大好きになっていったのだと思います。
プログラミングもそこなんですよ。
難しくても、できないままは嫌だから向き合って強くなった。強くなったら楽しさがわかるようになって、また次へって感じでスキルを上げてきた気がします。
ちょっとした好きがきっかけにあって「このままじゃ悔しいんじゃないの?」と思えて、乗り越えてもっと好きに、強くなって。このサイクルを回せるから仕事にできたのかな。
そうかもしれません。
ある時、プロデューサーとして社長へプレゼンして、ゲーム事業を立ち上げることになったんですよ。2年がかりの計画を、10人採用させてもらってスタートしました。
でも3か月目で突然「予算がなくなった」と社長から言われ、よくわからないままチームを解散させられたんです。
それで「お金がいくらあるか、どれだけ使えるかを把握できていなければいけない」と学んだのと、プログラマーとして1人でやっていこうかと考えたものの、やっぱり「デカいものをつくるにはチームが必要だ」とも思いました。
権限とチームがないと自分が本当につくりたいものはつくれないと思ったことが、起業のきっかけでしたね。そこからはもうひたすら、好きと悔しいのサイクルを回してきました。
給与が1番大事だった時代はとうに終わって、今は給与をもらいながら自分の内的な資産を貯めるという時代です。特に若いうちは、目先の給与ではなく、いい意味で整っていない会社へ入ることを薦めます。
整っていないと、自分で考えて答えを出していかなきゃいけないですよね。苦労が多い反面、内的資産が貯まっていく。そうして、レベルを上げるように何回か転職していけば、最終的に素晴らしいところ、より高い給与へたどり着けると思います。
もう1つ大切なのは、給与イコール自分の価値だと思わないことです。
そう思ってしまうと、今の環境が嫌になったり、逆に適切なタイミングで次のステージへ行けなかったりします。選択を誤らないために、今の自己価値はどの位置にあるのか常に考えておくべきだと思います。
設立7年目を迎え、会社も変革の時が来ていると感じます。
現状うちには、似たタイプの人が多いと思います。良く言えば協力的、裏を返すと主体性に欠けるような人たちです。
僕がわがままなので上手くバランスが取れていましたが、組織を大きくしていくにあたって、僕みたいなタイプも育てたいと思うようになりました。
時々僕とケンカをしたとしても、人を育てるとか、会社が成長することに喜びを感じて、チームを率いていけるような人が欲しいかな。今までと快感ポイントが違う人をつくっていきたいです。
すごく大事にしています。僕は、快感ポイントを刺激され続けることが仕事をしていける最大の理由だと思っていますから。
今後は多様な快感ポイントを持つ人たちが入り混じっていくと思いますが、理念に共感して叶えようと力を注いでくれている今の社員たちはもちろん、これから出会う新しい人たちともワンチームとなり、成長していきたいと思います。
仕事には困難がつきものです。「好きなことを仕事にしたい、だけど嫌いになってしまったらどうしよう」と考える人も多いのではないでしょうか。
里見氏は、悔しいと思った時かじりつけるくらいには好きであることが分岐点だと語ってくれました。
なんとなく諦めるのではなく、まずは漠然とある「好き」の解像度を上げてみる、まずは一歩だけ踏み込んでみましょう。もっと好きになる道が見えてくるかもしれません。
編集:佐藤 由理
2017年、フィグニー・デジタルオーシャン株式会社として設立。翌年よりWebアプリケーション・スマートフォンアプリケーションの受託開発をはじめ、IT/技術コンサルティング事業、CG制作事業など、次々に新事業を展開してきた。
21年以降東京ゲームショウに3年連続で出展、2022年からは新オフィス設立・事業部を発足するなど、事業拡大を加速させている。