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「自分は社会的に何者なのか」
恐れを力に変え「今すごく幸せ」と言えるようになるまで

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#何者#海に潜り込んでいける幸せ#殻を破る面白さ

株式会社フーディソン、山本 徹氏にインタビューしました。
「何者かにならないといけないという“恐れ”がエネルギーとなった」「殻を破らなきゃいけない場面にワクワクする」など、勇気のわくエピソードが盛りだくさん。今挑戦や転機を前にして、足がすくんでいる人にこそ読んでいただきたい記事です。

株式会社フーディソン
山本 徹
山本 徹社長のプロフィール画像

北海道大学工学部を卒業後、不動産会社を経て、2003年に株式会社エス・エム・エスの創業メンバーとして参画、取締役に就任。
13年にフーディソン株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。22年、東証グロース市場上場を果たした。

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「社会との接点を求めていた」青年を突き動かした“恐れ”

山本さんにとって“働く”とはなんですか?

“働く”という感覚はあまりなくて、仮説を立てて実験し社会の姿を明らかにして、そこに正しい打ち手を打つといった“実験をしている”感覚ですね。

自分が「これがいいんじゃないか」と思ったことを、オペレーションレベルでも構造レベルでも確認し続ける。それが競合していたら、正しく早くやる会社が勝つんでしょうし、競合していなければそれをやり切っている会社が独走し続けるってことなんじゃないかなと。つまりは“学びと実践の連続”という感じですかね。

素敵ですね。それはずっと持ち続けられているお考えですか?それとも働く中で築いていったものでしょうか。

初めは違いましたね、新卒の頃は“自己実現欲”が相当強かったなと思います。「自分にはこんなことができると証明したい」という気持ちがあって、競争の中に思いっきり入っていくみたいな感じでした。

当初は十分に言語化できていませんでしたが、今まで一貫しているのは“社会との接点を求めていた”ということ
社会と接点を持つために、社会にとっていいことが何かを考えて、その想いがビジョンになり、それを実行する組織にいることで、社会と接点を持ち得ますよね。
今はフリーランス的な働き方をできるようになってきましたが、昔は個人だとビジョンを掲げて社会との接点を持つということが難しかったので、働くとは“世の中とつながるために必要なこと”とも思っていました。
社会との接点を持ちたいし、自己実現をさせたいし、自分が何者かであるって信じたい。これがスタートにあったエネルギーです。

あとは、自己肯定感も高くはなかったので「何者かにならないといけない」という恐れもあって。
社会にとって必要不可欠で誰にも真似できないようなインフラをつくれたら、ずっと必要としてもらえるなと。「社会的に何者か」と認識できるものがあることで、安心感を得ていたのかもしれません。

だから起業を目指されたのでしょうか。

そうかもしれません。自信がなくても存在意義を感じるには、ポジショニングで勝つことが有効なんじゃないかなと思うんです。だからずっと、他人と違うことをやろうとしていたのかもな、と。

工学部でみんなが大学院からメーカーに行く中で、1人だけ不動産会社に行くとか。不動産会社から介護医療で起業を経験し、介護医療から魚で起業するとか(笑)傍からは理解されないけれど、誰とも比較されなければ、唯一無二になるわけじゃないですか。起業もそうで、みんなが起業しない中で僕が起業したらポジションを築けると思ったのかもしれません。

“徹底的に海へ潜り込んでいけること”が幸せで仕方ない

そんな山本さんから、会社選びのアドバイスを頂きたいです。

結局、人生をどう生きたいかじゃないですか。どう生きて、どう締めくくりたいか。

僕は自己実現のひとつとして起業しましたが、その欲もある程度満たされたからこそ今は、起業がすべてではないし、1番自分に対して問うべきは“人生のテーマは何か”だと思うんです。僕のテーマは、ありきたりですが“幸せになること”。

20~30代の頃は“今日より明日良くなっている”ことを幸せと定義していましたが、40代になるとまたその定義は変わってきまして…問いはシンプルでも答えを出すのは難しいことですから、自分なりのテーマを考えて、その実現に必要な会社へ行くのが良いのではないかと思います。

どう生きたいか…難しい問いですね。

伸び盛りの頃に終わりを意識してテーマを決めるって、確かにすごい難しいことですよね。

だからテーマは絞らなくてもいいし、途中で変わってもいいと思います。大事なのは、選択肢を持てていること。
自分がこうありたいって思った時に、そちらへの切り替えが難しいとなるとしんどいので、テーマが決まってないんだったら、幅広く世の中に必要とされるような能力をつけられる会社に入るのもありなのかもしれません。

ちなみに、今の山本さんにとっての幸せとは?

自分が興味があるテーマにとことん深く入っていけること”は幸せだなと思います。

例えばフーディソンでは魚が海から出た後の“流通”を担っているのですが、一方で個人的には、短期で経済的にリターンが見込みづらい“海の中の環境”にも興味が出てきていて。事業で海に関わりながら、個人的な興味としても海に関わる。この2軸を持って“徹底的に海へ潜り込んでいく”ことが自分がやるべきことなんだと思えて、今すごく幸せです。

マクロとスーパーミクロを同時に見て、
社会と自分をつなげていく

それは最高ですね!

実は、上場後に「上場がゴールになってしまったらすごくつらかったろうな」と思ったんです。せっかく登ってきても、マイルストーンを超えた時に「事業をやりたかったわけではなかった」なんて思ってしまったら空しいなって。

でも僕は幸いそうではなかった。水産流通の奥深さや、今我々がやっていることのバリューの高さ、でもみんなにあんまり知られていない世界を知れているといったすべてが楽しくて仕方ないと思えたんです。それこそ先ほどお話した“働く価値観”の芯を食っている感じがしていて、全然興味が褪せない
必要不可欠だけど目立たないテーマを、全人類に関係する“魚”を通じて実現できている。今や世界へ出ていけるチケットがあって、規模を拡大するほど他社の追随を許さないような状態になっていく…もう本当に幸福ですよ。

今僕は経営者として、上場後にもう一段階成長しなきゃいけないところにいると思いますが、それすらワクワクして仕方ありません

リーディングカンパニーでありながら、常に挑戦し続ける姿勢がかっこいいです。

自分の殻を破ってきた経験があるからこそ、この先のさらに大きいテーマに向けて“殻を破らなきゃいけない”場面がくると、たまらなく破りたくなるんです。 新たな挑戦とは成功体験の中から外れていくことですから、めちゃくちゃ怖い。でもその先にすごい幸せと思考の広がりがあることを体験上わかっているので、それがまたあると思うとワクワクします。

このように、僕はきっと、外のマクロ的なビジネス環境と、自分の内面であるスーパーミクロの部分の両方を見ている。
社会を正しく見て正しいアプローチを考え、自分を正しく駆動し、組織を正しく動かす…社会と自分をつなげていくってそういうことなんですよね。

だから自分の解像度が上がってくのも楽しいし、社会の解像度が上がっていくのも楽しいという…僕はずっとその中にいるのだと思います。

編集後記

山本氏から感じたのは、働くことへの“とめどないワクワク”。率直に「こんなにも楽しそうに“仕事”を語れる大人ってかっこいい」と憧れを抱きました。
そう思えるまでにはきっと“山本氏が語らなかった部分”=テーマを磨く努力が必要であり、失敗も伴うはずですが、その先にこんなにキラキラとした未来があるのなら頑張れそうです。この記事が1人でも多くの若者へ届くことを切に願います。

編集:佐藤 由理

「株式会社フーディソン」概要

2013年に設立された、水産をメインとする生鮮流通のプラットフォームを構築・運営している企業。
主な事業内容は、飲食店向けの食品Eコマースサービス『魚ポチ』、個人向け鮮魚セレクトショップ『sakana bacca』、食品事業者向け人材紹介サービス『フード人材バンク』の運営。

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