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リユース企業CEOの壮絶な半生と、
新たに描く“人の価値再生”というビジョン

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#人の価値再生#動けるバカ#意思決定の重要性

株式会社買取王国の代表取締役社長、嶋本 匡能 氏にインタビューしました。
19歳にして4400万円の借金を抱え「働かざるを得なかった」という同氏。働きづめの1年間を経て、改めて進学ではなく働くと選択した20歳から、人生が回り始めたと言います。
意思決定の重要性や嶋本氏の仕事観、成長できる人が持つ共通点など、詳しく聞きました。

株式会社買取王国
嶋本 匡能
嶋本 匡能 氏のプロフィール画像

1995年に兵庫県立鈴蘭台高校を卒業したのち、八百屋・ラーメン屋のダブルワークを経験。
1997年、株式会社Kurokawaへ入社。株式会社買取王国へは2008年に入社し、2021年に同取締役営業本部長就任、2022年同取締役社長 兼 本部長就任を経て、翌年に同代表取締役社長 兼 本部長就任。

画像引用元:買取王国キャリア採用サイト(https://www.okoku.jp/saiyo/career.html

嶋本 匡能 氏のプロフィール画像

検索に依存していないか?未来のために、真の意思決定をせよ

採用ページに「素直な人が欲しい」とあったのが印象的でした。嶋本さんが考える素直さとは、なんでしょうか。

素直であるとは、イエスマンではなく正しい価値観を持って、自ら意思決定できる人という意味です。本質的には、それによって自分の価値観を磨き、意思決定できる人になっていくことが大事だと思っています。

今って、調べれば答えらしきものが出てくるのが当たり前じゃないですか。それに慣れると、自分で経験していなくても「ここに書いてあったから、正しい、できる」って思ってしまうんですよね。
でも実際にやってみるとその通りにはいかなくて、諦めたり、他人のせいにしてしまったり。特に若い世代は顕著だなと感じます。

“今”は、過去にしてきた決定の上に成り立つ。だから、意思決定の材料は“普遍的な原理原則”と“自分の経験”であるべきです。
自分で考えて行動する中で、自分はなにが得意なのか、苦手なのか。できるようにするにはなにが肝か、どういう部分が他人と違うのか知っていく。そうして磨かれていく価値観をもとにあらゆる決定をし、その決定に責任を持つ。これがとても大事だと思います。

抗えない運命の中で、生き方を見つけた

ご自身も若い頃から、そのように意思決定をしてこられたのですか?

いや、僕の場合は自分で意思決定できなかったこともたくさんありました。
19歳の時、父親が癌で余命3ヶ月と言われたんです。実家のローンが4400万も残っていたのですが、父親が遺した家なので何とか守りたいなと思って。同時に、詐欺で何千万かの借用書を突きつけられて。「払おう」じゃなくて「払わざるを得ない」と、19~20歳はがむしゃらに働きました

お昼は八百屋、夕方からラーメンの屋台。朝5時に野菜を仕入れに行って、屋台が終わるのは朝3時ですから、ほぼ寝ない生活でしたね。

10代の頃からそれだけ働かれていたんですね。

途中でラーメンがすごく流行ったおかげでだいぶ楽になって、そこから大学に行くか悩みました。
友達を見ると学生生活も楽しそうだなと思ったのですが、僕は特にやりたいこともなかったし、仕事している方が楽しいなと思って進学をやめました

この時初めて自分で“働く”と決めたんです。そこからですね、自分で意思決定するようになったのは。

今自分で決められる若者は多くないと思います。そういう人が意思決定できるようになっていくには、どうすれば良いでしょうか。

まずは、自我が芽生えたくらいから、親が善悪については教えつつ、子のやることを承認するのが重要だと思っています。
ただ色んなご家庭がありますから…大人になってから意思を育てるには、成功体験を積ませてあげることですね。

買取王国では、入社前に新卒の皆さんに誰と働きたいか上司を自分で決めてもらいます。同様にコーチと呼ばれる上司社員も、どの新卒と働きたいかを決めてもらうマッチングキャンプというものを行います。
一緒に働きたい人を自分で選ぶところから社会人生活をスタートさせて、その中で成功体験を積んでいってもらうようにしています。

買取王国をつくっているのは“動けるバカ”たち

自分で決められるということのほかに、社員に求めることはありますか?

僕は、社員が働き続けたいと思える会社をつくりたい。だからこそ、1人ひとりに“会社をつくるのは自分だ”という意識を持って欲しいと思います。

もちろん、働きやすくなるように評価制度や環境は全力で整えていきますが、そこに従事する皆さんから出た意見をもとにしたほうが、働き続けたい会社になっていくのではと思うからです。
誰もが声をあげられるように「1人の行動や成長によって会社は変わっていく」「自分が働きたいと思う会社は自分でつくれ」と、日々伝えています。

声をあげるのに役職や年齢は関係ないのですね。

うちは役職も年齢も、学歴も関係ありません。これも大きな特色かもしれません。
高校に行っていない役職者なんてザラにいますし、新卒からどんどん上がって若くして部長職という子もいる。1番売り上げている部署の部長は33歳かな、みんなそれぞれ活躍してくれています。

成長できる人の共通点はなんでしょうか。

一言で言うなら“動けるバカ”ですね。愛と親しみを込めて呼んでいます(笑)
これまでの人とのかかわりや経験から学んできたことを、愚直にやれる。頭で考えて、やれない理由を言うより「とにかく一度やってみよう」と行動できるタイプの子たちは成長が早い。そんな彼らを筆頭に、皆が会社を押し上げてくれていると思います。

リユース業として、今後は“人の価値の再生”も考えたい

とことん個人を尊重してくれる会社、モチベーション高く働けそうです。

有難いことに「ここで働きたい!」と、うちのファンになって応募してきてくださる方が多いんです。人員が足りているので、退職者が出るのを待ってもらっている店舗もあるくらい。
先日なんて、接客サービス未経験の55歳の方が応募してきてくれたんですよ。ずっと製造業にいらっしゃったとのことでしたが、その場で採用しました。

即採用ですか。

これまでの社会人経験を踏まえてうちを選んでくださったことがまず嬉しかったですし、その方が仮にうちで活躍してくださって「人生最後の仕事が買取王国でよかったな」って思ってもらえたら、めちゃくちゃいいよなって思ったんですよ。

しかもその方の成長によっては、定年を控えてもこんなに成長できる、イキイキ働けるという実例が、うちの中でできるじゃないですか。1人の社員をロールモデルに、会社がまたすこし強くなる

僕たちはリユースといって、モノにもう一度価値をつけて販売をするという仕事をしています。大きなくくりで“価値の再生”と捉えると、これは人にも通じるなと。 今後はそういうことも考えながら、社員の皆さんと一緒に歩んでいきたいと思います。

編集後記

“今”は、過去にしてきた決定の上に成り立つ。
自分で選べたこと、選べなかったこと。その両方を経験しながらも、意思決定に強くこだわってきた嶋本氏だからこそ語れる言葉だと感じました。

岐路に立たされた時は、検索ー誰かの答えーではなく、過去の自分に問うてみることにしましょう。意思決定は“自分の経験”をもとにする、決めたことに責任を持つ。その積み重ねが、明日の自分をつくります。

編集:佐藤 由理

「株式会社買取王国」概要

1999年設立。愛知県を中心に店舗展開を開始し、2002年に1号店をオープン後はますます店舗数を拡大、2012年には大阪へ初出店を果たした。
2017年より中古工具専門店である工具買取王国を加速度的に展開、不要なモノで寄付ができる寄付事業「モノドネ」など、多様なサービスにチャレンジしている。

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