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64歳で会社設立、81歳で上場_
第一線を走り続けるCEOに問う“働くとは”

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#シリアルアントレプレナー#傍を楽にする#社会貢献の形を考える

CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回は、64歳で株式会社Mマートを設立された村橋 孝嶺氏にインタビューしました。
インターネットを活用した起業や、現在も経営の最前線に立つ姿勢は、人生100年時代における希望の象徴とも言えるでしょう。村橋氏が描く事業構想や成功の秘訣、仕事や人材に対する考えについて伺いました。

株式会社Mマート
村橋 孝嶺
村橋 孝嶺社長のプロフィール画像

20歳で飲食店経営をスタートし、居酒屋、パブ、レストラン、カラオケ店など時代の流行を捉え、20店舗以上を展開。
2000年、食材流通を効率化するために64歳で株式会社Mマートを設立。IT未経験ながら、食材や厨房機器の取引サイト「Mマート」を開発し業界を牽引。81歳でMマートを東証マザーズ市場に上場させ、シリアルアントレプレナーの最年長組として注目を集める。88歳となった現在も経営の第一線で活躍中。

画像引用元:株式会社Mマート公式サイト(https://www.m-mart.co.jp/ir/management/index.html

村橋 孝嶺社長のプロフィール画像

働くとは“傍を楽にすること”

飲食業界に特化したマーケットプレイス事業をスタートされた当時、インターネットに詳しいわけではなかったと伺っています。どのような想いで事業に取り組まれたのでしょうか?

当時、複数の飲食店を経営していましたが、新しい商品や仕入れ先を見つけるのにとても苦労していました。
長年飲食業に携わってきた私でさえそうだったので、これから新たに飲食業を始める方々にとっては、さらに大きな課題だろうと感じたんです。この問題を解決し「買い手と売り手を効率よくマッチングさせることができれば、飲食業界全体の役に立てる」と思ったのが、事業スタートのきっかけです。

そこで目を付けたのが、ちょうど普及し始めていたインターネットでした。当時はクローズドの有料会員制の食材卸サイトがある程度でしたが、中小の飲食店でも誰でも利用できるようなオープンな卸売マーケットは無かった。それなら自分が作ろうと決めたんです。
情報をオープンにして、買い手にとって使いやすいシステムを目指した結果、売り手側にも全国から注文が集まり、双方にとって良い結果を生み出すことができました。

自社の利益だけではなく、使う人の利便性を最優先に考えられたのですね。

そうですね。昔から言われている言葉で「働くとは、傍(はた)を楽にすること」というのがあります。やっぱり一生懸命働くことで世の中を少しでも良くしていく。それこそが働くことの本質だと思います。
頑張って働き、価値を生み出すことで、多くの人に喜んでもらう。それが大事なんです。自分の利益だけを追い求めるのではなく、お客様が何に困っているのか、何を必要としているのか、業界全体がどう動いているのかを常に考えなければならないと思います。

企業活動そのものが社会貢献と密接に結びついているのだろうな、と感じます。

はい。ビジネスとは、企業活動を通じて価値を生み出し、社会に貢献すること。そして、従業員に給料を支払い、人々の生活を支える存在であるべきだと常に思っています。これまでもずっと「どうすれば社会に貢献できるか」「どうすれば多くの人が喜んでくれるか」を考えながら行動してきました。

また、個人でも組織でも同じことですが、進化し続けることが大切です。長いこと働いてきましたが、今なお「変化を恐れず、改善を続けていくことで成長していける」と信じています。

与えられた役割へ一生懸命になることで、道を切り拓いてきた

長く飲食業界に携わられていますが、それは自らやりたいと考えてのことだったのでしょうか。

いえ実は、やりたくて始めたわけではなくて…最初は頼まれたから引き受けたんです(笑)

でも、頼まれた以上は全力で取り組みました。その結果、今ではこの仕事を自分の使命だと思えるまでになって…だから今もこうして続けているのかもしれませんね。

使命、ですか。

はい。人にはそれぞれ得意なことや役割があります。誰かを引っ張っていくのが得意な人もいれば、縁の下の力持ちとして支えるのが得意な人もいます。
でも、与えられた仕事を自分の使命だと捉えて一生懸命にやる姿勢は、どんな部署や職種であれ、とても立派なことだと思いますよ。

失敗したり、ネガティブな気持ちになったりすることはありませんか?

もちろん、マイナスなことがあって気持ちが沈んだり休みたいと思ったりすることも少しはあります(笑)

でも、私が落ち込んで休んでしまったら、社員やステークホルダーの皆さんが困ってしまいますよね。だから、落ち込んでいる暇はない!と思って頑張っています。落ち込むのは贅沢なことじゃないか、と自分に言い聞かせたりもして。

大切なのは、自分と環境を知り、信頼を積み重ねてゆくこと

今、社会に出ようとしている方々の中には、会社選びに迷ったり、自分が何をやりたいのか分からないと悩んでいる人も多いと思います。そんな方々に向けて、アドバイスをいただけますか?

まずは“自分本位になりすぎないこと”が大切です。自分はどんな形で社会に貢献できるのか、あるいは社会を変えるために何ができるのかを考えた上で、それを実現できそうな会社を選ぶと良いと思います。
若いうちは、自分がどういう人間で、どんな強みを持っているのかを判断するのはなかなか難しいものですけどね。

そして入社したら、まずは与えられた仕事に全力で取り組みながら、物事や社会の全体像を少しずつ知っていくことが重要です。仕事をしていくうちに視野が広がり、より大きな社会の仕組みや他者の考えが見えてくるようになると思います。

私自身も飲食店を一生懸命やっているうちに、業界全体の仕組みや取引先の考え方、さらには社会全体の動きが理解できるようになっていきました。
自分が置かれている環境をしっかりと理解することも大切ですよ。今、自分が立っている場所がどんな場所なのか、自分はその中でどんな役割を期待されているのかを知るための勉強をしてください。

大事なのは、部分的な知識だけでわかった気になるのではなく、業界全体、社会全体の構造を理解する努力を続けることです。
自分自身を知る。そして自分の責任を果たし、その場で求められる役割を全うすれば、周囲は必ずそれを評価してくれます。放っておかれやしませんよ。「責任感の強い奴だ」って言われて、周りがさらに引き上げてくれるはずです。

そうして信頼を積み重ねていけば、自然と道は拓けていくと思います。

編集後記

村橋氏が繰り返していたのは「自分自身を知ること」「自分が立つ場所や社会全体をしっかり理解すること」の重要性でした。
また「社会が本当に求める価値を提供し続けることで、自然と利益はついてくる」という考え方は、Mマートの社訓にも通じています。売り手や買い手からの信頼を築くことは、事業の土台であり成功の鍵であるという村橋氏の言葉には、長年の経営者としての深い洞察と哲学が感じられました。

編集:佐藤 由理

「株式会社Mマート」概要

2000年創業。BtoBの電子商取引プラットフォームを提供するリーディングカンパニー。
業務用食材のオープンな取引を可能にしたサイト「Mマート」は、買い手会員22万店以上を誇る。このほか厨房機器や業務用備品を扱う「Bnet」、アウトレット食材市場「卸・即市場」など、複数のECサイトを展開。2018年に東証グロースに上場。革新的なビジネスモデルで業界に新風を吹き込み続けている。

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