株式会社M&A DXの創業社長、牧田 彰俊 氏にインタビューしました。
「学びたいことがなくなるまで学びきる」「今よりいい景色を見たいという気持ちを持つ」「時代を上手く味方に付ける」など…牧田氏のストーリーには、たくさんの金言と実践的アドバイスが!働くすべての人に届けたい記事です。
公認会計士は試験に受かったら就職になるので、新卒という概念がありません。在学中の20歳が就職する場合も、30歳過ぎて入る場合もある。
たまたま僕が受かったのが2009年、リーマンショックの真っ只中で選り好みしている余裕がなかったというのが本音です。
ただ大手監査法人の中でもデロイトを選んだのはオフィスが1番堅実だったからです。
デロイト以外のファームが一等地のビルに入っていたり、カップの自販機を飲み放題にしていたりしたのに対し、デロイトは1番駅から遠くて地味な古いビルに入っていたんです。
前者のほうが人気でしたが、僕としてはデロイトのほうがまともな経営をしているように思えた。「ジュースをあげるより、ボーナスで還元しよう」という会社なんじゃないかと。
利便性や設備も社員を大事にすることのひとつだとは思うのですが、地に足をつけて経営しているということも企業選びの重要なポイントな気がします。
大企業にいないとできないこともあるので“ここでやれることはぜんぶやり切る”つもりで働きました。あとはM&Aもやっていたので、学びたいことがなくなるまで学ぼうと思っていました。
そう、難しいのは“学べることはいくらでもある”ということです。日々より難しいあるいは大型の案件が入ってきますから、そこで学べることって際限がないんですよね。でもそれと自分が学びたいことって、必ずしもイコールじゃない。
会社の方向性と自分の興味が合うところまでは一緒に楽しくやらせていただいて、「ここで学びたいことを学びきったな」と思えた時に、次へ進みました。
いえ、上手くいったことのほうが少ないと思います。挫折や失敗だらけな気がしますよ(笑)
ただ振り返ると、いい勉強になったなと思えることがほとんどですね。
「今よりいい景色を見たい」ということじゃないですかね。
売上1億円なら1億円なりの、100億円なら100億円なりの景色があるでしょうし、それだけ企業規模が大きくなればお付き合いできる企業の幅も広がって、もっと面白い仕事をできるようになる。
そういう意味で、僕自身も見たことのない景色を見たいし、社員にも経験してもらいたい。それが原動力になっているような気がします。
せっかくうちみたいな中小企業に入ってきてくれたので、自分たちで大企業にして「面白いなこの会社」「入ってよかったな」って思ってもらいたいですよね。
多様性に富んでいます。テクニカルが強い人も、コミュニケーション能力が高い人もいて、いいなと思います。
面白い話があって。
ただ一生懸命にやっていることがヒシヒシと伝わるようなキャラクターの人がいるのですが、彼はなにかに秀でていたわけではないのに、入社後早くに成約を頂いてきたんですよね。
この話から伝えたいのは、一芸があれば食える道があるということです。
もちろんテクニカルからハングリー精神まで揃っているような人はベストですが、そういう人はなかなかいないし、うちに合うかもわからない。
それなら「一芸に秀でた人を集めてパーティーをつくれば、いい形になるのではないか」と思って、そういう採用方針をとっていますね。
そうですね。実際に社員からアイディアが出てくることもたくさんあります。それも企画会議とか制度的に募っているわけではなく、社員から自主的にです。
僕ができることというのは、自由に働ける箱を用意して色々な人や予算を入れて、化学反応を待つってことなんじゃないかと思います。今後組織を拡大していく上でも、この文化は保っていきたいです。
あとは大きな話をすると、こういうことを国をあげてやっているのはアメリカだと思っていて、それが国力につながっているのではないかなとも考えています。
日本企業は協調性とか規律といった部分に重きを置いていたから、1方向の強さしか伸びなかった。
日本が高度経済成長期に伸びて、失われた30年で伸びなかったのはここだと思うんです。うちは色々な一芸を取り入れながら、組織を強くしていきたいと思います。
昔は長時間働くことが当たり前だったので、どんなにその道に向いていなくても量をこなす中でそれなりに力がつく、成長するという意味では楽な時代でした。
今は長時間働くこともNGだし、上司も配慮すべきことが多すぎて指導が難しい。
つまり“どれだけやるか”が個人に委ねられるようになったので、これからは個人によってキャリアの差が大きく開いていくでしょう。
ただ一方で、昔より良くなったこともあります。
YouTubeもSNSもあるし、ノウハウを知れる講習もあちこちで開催されているし、知らない人とも手軽に話せるようになった。さまざまな情報を無料でとれるようになったというのは貴重だと思います。
そういう良い点を取り入れて、厳しくなった点に関しては対策を考えて働いていくことで、上の世代よりレベルの高いビジネスパーソンになれる可能性も高いはず。
若い人たちには「自分で自分をどこまで追い込めるかだよ」と伝えたいです。
さまざまな言葉を尽くし語ってくださった中でも、最も輝いていたのは「今よりいい景色を見たい」という一言のような気がしました。
今ここで学べることを学びきり、次のステージへ上がること。きっとその先にしか“いい景色”はないでしょう。しかしそれに出会う瞬間こそ、働く意味のひとつではないかと思います。
時代や環境に甘んじず、一歩ずつ進もうとする若者が、1人でも日本に増えることを願います。
編集:佐藤 由理
2018年設立。M&Aと事業承継に関して多様な提案をワンストップで実現できるという強みを磨きながら、M&Aの総合商社として、クライアントビジネスの成長に寄与してきた。東京のほか、名古屋・大阪・福岡にもオフィスを展開している。