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「絶対飽きないものをやりたかった」
CEOに聴く“自らキャリアを選ぶ”ことの楽しさ

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#人生は鍛錬#ペットヘルスケア事業#飽きない仕事を

CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回インタビューしたのは、ペットゴー株式会社代表取締役社長の黒澤 弘氏です。
住友商事からマッキンゼー、起業という華々しいキャリアを歩んできた黒澤氏。その“選択をした時”の話を伺う中で、働くことの本質が見えてきました。

ペットゴー株式会社
黒澤 弘

1994年に中央大学経済学部を卒業後、住友商事株式会社へ入社。2000年、McKinsey&Companyへ入社。
04年にペットゴー株式会社を設立し、代表取締役へ就任。17年、ペットゴープロダクツ株式会社の代表取締役に就任した。

新卒から起業を見据えたキャリアプラン、そして創業へ

1社目に住友商事を選ばれた理由や、マッキンゼーへの転職理由など詳しくお聞かせいただけますか。

実家が自営業でしたので、私も将来は自分で事業をやりたいと思っていました。総合商社なら財務、経理、総務、法務、人事…あとは事業面も含めて色々なことを学べるだろうと思ったのと、当時の住友商事が大きく打ち出していた「1000人の社長をつくる」というプロモーションメッセージに惹かれて、入社を決めました。

住友商事ではインターネット系の事業に関わらせていただいて、事業を複数立ち上げることはできたのですが、立ち上げた後に経営を継続していくためには足りないスキルがあるなと気づき始めたんですね。マッキンゼーには知人からお声がけいただいて入社したのですが、彼らと話しているとどうも“問題解決能力”という、総合商社では学んだことがないようなスキルがあるなと。
そういったものを学んでおかないと、事業を始めてもさまざまな落とし穴にズボズボはまっていっちゃうなという恐れを感じて…落とし穴にはまった後でもしっかり解決ができるとか、そもそも事前に落とし穴へはまらないようにするためのスキルが必要だなと思って、マッキンゼーへ行きました。

マッキンゼーで4年間経験を積まれてからペットゴーを設立されたとのことですが、なぜ今の事業モデルにたどり着いたのですか?

理由はいくつかありますが、そのうちのひとつは“絶対飽きないものをやりたかった”んですね。
命をかけて立ち上げた事業に対して飽きてしまうというのは恐ろしいことです。社員もお客様もいる中で、私の情熱がなくなってしまってはいけませんから、自分が大好きで絶対飽きないものをやりたかった。それは自分が大好きな「インターネット」×「何か」と考えて、ペットだなと。

私にとって犬や猫っていうのは、非常に奥深い生き物です。
可愛いから飽きないというより、言葉を話せないからこそ「なにを思っているのかな」と考えるので、とても不思議なんです。幼い頃から大好きですし、犬や猫を幸せにすることをやっている限りは、たぶん飽きないなと思います。

黒澤さんはペットを飼われているんですか?

はい。保護団体からトイ・プードルを2匹迎え入れて、一緒に暮らしています。ちょうど明日旅行へ行くので、よかったらペットとの写真を記事に使ってください(笑)。

黒澤 弘社長とペットの写真

「世の中のためになることをしたい」
仕事とは、それを実現する手段

新卒時代から創業まで、やはり相当な時間働かれたのではないでしょうか。

今思えばきつかったですね、ただやっぱり若いからなんだろうな…当時は楽しいっていうか無我夢中で生きてるので、そのさなかに大変とは感じないんですよね。大変なはずなのですが、なにが大変なのかさえわからなくなるというか(笑)。

目をつむっても仕事のことを考えているし、週末もトイレに行っても風呂に入っても…それは今もそうかな。
もちろんリラックスする時間はありますが、常に仕事のことが頭にあります。仕事一筋の人生です。

でもそれが楽しい。きっと私は心から仕事が好き、私の仕事で世の中へ返すものをつくっていくということが好きなんですよ。

大変な状況さえも気づかないくらい仕事に打ち込まれてきた、そのモチベーションはどこからくるものなのでしょう?

インタビューを受けるにあたって考えてみたのですが、恐らく私の価値観には“世の中のためになることをしたい”ということしかないのだと思います。それを達成するには、方向性をパンパン変えていられないから、ある意味しつこくゴールへ向かってやり続ける。

例えば今なら、お客様が飼育されている犬や猫をどうやって幸せにするか考え、自分が生かされていることへのお返しをしていくことですよね。それには社員のスキルを上げることも、いい商品をつくることもそうだし、利益を上げて投資したり雇用を拡大したりすることも、貢献につながるだろうなと。
働くって“社会に恩返しをし続けること”だと思うので、個人的なモチベーションというものはありません

そう考えるようになったのはいつからですか。

高校生か大学生くらいの頃に“自分がなぜ生まれてきたのか”と、自分の存在意義を考え始めて…自分の場合は「世の中に貢献するために生まれてきたんだな」と思ったんですよね。
だから学生時代からボランティアもしていたし、阪神淡路大震災や東日本大震災の時にもボランティアに参加したり…社会を良くするために自分のスキルや能力を使っていく、純粋にそれだけです。

黒澤 弘社長が講演している様子

キツイ環境に身を置き鍛錬せよ、それは生きてゆく力になる

そんな黒澤さんから、今のZ世代はどう見えていますか。

いつの時代も、上の世代の人は下の世代を見たら「価値観が違う」と感じるものですから、Z世代が特異な存在とは思いませんね。時代が変わると価値観も変わっていきますが、人間の根本は変わらないのでしょう。

ただどの時代でも「なにをして生きていけばいいかわからない」と悩むのは永遠の課題で、それを見つけられる人と見つけられない人、見つけようとしない人もいますが…それを見つけられたほうが有意義な人生を送れるんじゃないかなと思います。

読者へ向けて、会社選びのアドバイスを頂きたいです。

そうですね、人生は鍛錬ですから。
やりたいことがあるならそのスキルとかを身につけられるところへ行けばいいと思いますが、本当にやりたいことがある人なんてわずかだと思うので、1番のおすすめは1番キツイところへ行くことです。そうしないと自分が鍛えられない。
キツイって言葉は良くないかな、“良い経験ができるところ”ですね。

吐き気がするくらいのプレッシャーと環境のもと働くことが、自分を鍛えてくれますから。そうした環境に身を置きつつ「自分はどうしたいのか」考え抜くことで、人生が充実していくのではないかと思います。

編集後記

一切苦労として話さないかっこよさに尊敬の念を抱きつつ、「人生は鍛錬」という一言に、黒澤氏の仕事への姿勢がぎゅっと詰まっているような気がしました。
「自分はなにを成し遂げたいのか」常に自問自答しながら、自分からも仕事からも逃げず、“考え抜く”20代にしたいと思いました。

編集:佐藤 由理

「ペットゴー株式会社」概要

2004年に設立された、ペットヘルスケア事業を手掛ける企業。翌年には通販サイト「ペットゴー」をオープン、楽天市場やYahoo!、Amazonへも支店を拡大。08年、動物病院「ペットビジョン」を吸収合併し、ペットヘルス商品の取り扱いを始める。ペットゴーを順調に拡大し、22年には東証グロース市場へ上場した。
関連会社に、ペットゴープロダクツ株式会社。

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