CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回は、株式会社ピアラ・飛鳥 貴雄 氏にインタビューしました。
変革の激しいマーケティング業界の前線を走ってきた飛鳥氏は、時代の潮流をどう捉えているのか。そんな飛鳥氏が“共に働きたい”と思う人材の要件とは?
前提、マーケティングの中でイノベーションを起こした会社があまりないというか。僕が学生の頃から電通、博報堂、ADKという順番は変わらないし、インターネットが入ってきて以降もあまり変わりがない。もちろんサイバーエージェントがデジタルの一角を取り切ったというのはありますが、それも20年前のことです。
だからこそ“自分がやってきた業界でなにかイノベートを残したい”ということはひとつ、働く価値観としてありますね。
例えば今はもう、人口が減りターゲットが減り、コストが上がり情報が増えたという状態なので、広告にお金をかけても勝ちにくくなっているんですね。
商品・サービスがヒットしにくくなっている状況でどう支援をできるか考えた結果、僕らはPR・バズ路線を進めようと。バズるということをデータ化したり学習したり、そこから売れることにどう結び付けていくかなど、いわゆる“バズ売れ”をサイエンスする、みたいなことをしています。
こうした新しい試みを通じて「マーケティングの一角を変えたよね」と言われるような会社になりたいという想いはあります。
AIの時代ですから、自分をどんどんブラッシュアップしていかないとキャリア価値は下がっていってしまいます。そういう意味で、会社自体が変革に富んでいるかは重要なポイントだと思います。変革がないところで学ぶのは、その先のキャリアを考えても厳しいのではないかなと。
この時、第1次・第2次・第3次産業で時間軸が全然違うということは踏まえておいたほうがいいですね。
IT企業なら、業界自体の変化が速すぎるので、企業も相当フレキシブルに変わっていないと変ですが、メーカーさんや製造業は30年単位で変わってゆくものです。その業界の時間軸で見た時に、きちんと変革しているか。それが大事です。
ただやっぱり自分がなにを求めるかですよね。
腰を据えてゆっくりスキルを磨いていきたい人なら、時間をかけて変わってゆくような産業の方が向いているし、どんどんスピード感を持って成長していきたいなら、AI系とかITベンチャーが良いと思います。携帯の機種以上に変わっていくその速度に、自分もついていかなくてはいけない。相当鍛えられるはずです。
自分のタイプに合わせて業界を見てみると良いかもしれませんね。
アジアを中心に、海外の色々なベンチャー企業を見ていて、日本が1番働いていないと感じます。
人が足りない、資金が足りない、サービスも足りないという中で、平等なのは時間だけじゃないですか。それにもかかわらず、限られた時間の中での集中レベルがかなり低い。
例えば、22歳で入社して60歳で定年退職するとして、人生のうち何パーセント働いていると思いますか?
そういう感覚ですよね。でも実際は17%くらいなんですよ(24時間中8時間働いた場合)。
みんな「人生のほとんど働いているよ」と言いますが、そんなことはない。その20%弱をやり切ったとしても、人生全体で見たら大したことないじゃないですか。
長く働くことを推奨するわけではなくて、働いている時間なんて人生のうちのほんの一部ですから、集中してやらないともったいない。限られているからこそ、もっと本気でやってもいいですよね。
マーケティングって、自分から業界やターゲット、ユーザーのことを本気で知りに行かない限り本質って見えてこないんですよ。
自分の意見ばかり言っていては、相手からしたら「うちのブランドはこう考えているのに、あなたの提案は全然合っていない」ということになりうる。でも、相手のことを本当に考え相手の立場に立って話していくと、当事者意識が芽生えて、そこから上手く回り始めるんですよね。
だから大事なのは、他責にしないこと。「この失敗は○○さんのせい」ではなくて、自分になにかが足りていなかったからだと考える。
足らずを知って努力することで成長していくと思いますし、裏を返せば、足りていないことを自覚できない人って成長しないと言える。当事者意識を持って、自責で物事を考えられるということが最も重要です。
はい。2つ目は、失敗に対してあまり凹まないこと。
仕事だと7割成功しないといけないと思う人が多いのですが、ヒットなんてそんな簡単に打てませんよ。でも、ヒットを打つには打席に立たないといけない。
マーケティングなんて特に再現性が続かないくらいすぐに変化しますから、新しいことを覚えなくてはいけないし、成功法もコロコロ変わる。打てるように試行錯誤しながら、空振りしても打席に立ち続けなくてはいけない。
だからできるだけ凹まない人の方が向いているし、反対に、失敗によって挫折してしまいがちな人は変化が少ない業界を選んだ方がいいかもしれません。
そうですね。失敗をきちんと反省したり、次の行動につなげたりしないと、成功にはなかなか出会えませんから。
当事者意識を持って、失敗を恐れず前向きに打席に立つ。立ちまくることが大事だと思います。
17%という数字を聞いて驚くと同時に、そのわずかな時間さえも「全うできているか?」と問われたら、どうだろうか…と考え込んでしまいました。あなたはどうでしょうか?
労働時間の制限、それでも変化スピードは速まっているといった“変えようのない事実”を受け入れ、「それで、自分はどう働くのか?」と問い直すことが、自分と未来を変えるのに必要なことかもしれません。本記事がそのきっかけになったら幸いです。
編集:佐藤 由理
2004年創業。ECマーケティングテック事業、広告・マーケティング事業のほか、インバウンド事業なども手がけるマーケティング会社。中国、タイ、ベトナムにも拠点を持ち、アジア市場に向けてサービスを展開している。18年に東証マザーズ上場、20年東証一部上場。