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ピクスタ誕生秘話から紐解く、情熱を注げるテーマと出会うためのヒント

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#経験から仮説を立てる#やりたいことの見つけ方#ピクスタ誕生秘話

ピクスタ株式会社・古俣 大介氏にインタビューしました。
あることをきっかけに、今日のピクスタにつながる「人生をかけてやるべき領域だ」と思えるテーマと出会ったという古俣氏。そのきっかけと経緯から、やりたいことを見つけるためのヒントが見えてきました。

ピクスタ株式会社
古俣 大介
古俣 大介社長のプロフィール画像

多摩大学在学中に起業、大学4年次に株式会社ガイアックスにインターン入社。正社員入社後、新規事業部の立ち上げ・子会社の立ち上げに参画、取締役に就任。
2002年に有限会社万来を設立、03年に撤退しEC事業を開始。05年に株式会社オンボード(現 ピクスタ株式会社)を設立。13年にPIXTA ASIA PTE.LTD. Director、16年にPIXTA VIETNAM CO., LTD. 会長就任。

古俣 大介社長のプロフィール画像

今は生き方が広がった良い時代、
しかしだからこそ自立した選択を

昨今の若者の仕事観をどう捉えていますか?

昔は良い会社に入れたら安泰で、会社に生活を捧げるというような価値観だったのに対して、最近は副業・NPO・ボランティアなど、会社の仕事以外にも器用に取り組む若者が増えてきましたよね。これは、生き方の選択肢を広げるという意味で良いことだと思います。

若者が人生のビジョンに沿って自ら考えてライフスタイルを確立していくというのが、本人にとってはベストでしょうし、それによって自分が成長したり社会貢献につながったりすれば、それは社会と個人にとっての良い関係性と言えるのではないでしょうか。

古俣さんは新卒時代どのように働かれていたのですか?

僕の場合は、学生の頃から「起業して事業で大きな価値を生み出したい」という想いを持っていたので、その時入社できたガイアックスという場所で修行するのが1番近道だと考えて、一時期そこに生活を捧げていました。

当時はガイアックスが創業2年目ぐらいで、スタートアップとしていかに速く成長するかというフェーズでしたので、だいぶ極端なやり方をしていましたね。
例えば、社長は家を解約してオフィスに住んでいて、社員たちも感化されてみんな半ば住むようになるんですよ。毎日合宿みたいな感じでした(笑)

そうした熱量を注げることを見つけられない学生も多いのではないかと思います。

「人生をかけてやるべき領域だ」と思えるコンセプトと出会うのは容易ではありません。
僕も、埋もれているクリエイターの才能をつなぐことを起点に、現在のピクスタの理念である「才能をつなぎ、世界をポジティブにする」というコンセプトにたどり着くまで、最初の起業から4〜5年かかりました。

最初はもう、わからないなりにもこれまでの人生を振り返って仮説を持つしかないんですよね。自分はこういうことが得意かもしれない、好きかもしれないということを試していくしかない。できれば学生ならインターンなどで試してみると良いし、就職してから何かしらの手段で適性を探るというのも良いと思います。

ただ「この会社に入れば一応大丈夫だろう」などという依存した考えを持ってしまうと、それが逸れた時に落ち込んでしまうので、仮説を持って自立した考えで入るということが大事ですね。

ピクスタは、つくりたい世界から
逆算して生まれたビジネスだった

そうした新卒時代からこれまで、なにがモチベーションとなって動き続けてこられたのでしょうか。

父が読書は大事だからと「本だけは何でも買っていい」と言ってくれていたこともあって、小学生の頃から、興味を持った小説やマンガを乱読したりゲームもやりこんでいたりしました。好きが高じて自分も創作の真似事をしたこともあったのですが、そこまで才能がないことを悟ったんですね。

ただ20代で色々な事業をやるうち、その原体験に立ち返って“好きだけど仕事にするところまでいかなかった”人や、“好きだけど違う仕事に就いている人”が僕以外にもいるかもしれない、そういう人たちに自分の才能や好きなことで社会に認められる・貢献できる・稼げる機会を提供できたら、それは自分がすごく情熱を注げることになるかもしれないと思ったんです。
原体験と、そこから見つけたビジョンが自分を突き動かしてきた気がしますね。

事業を立ち上げられてから、どんな困難がありましたか?

こうした取材ではよく創業から3~4年の資金繰りについてのお話をすることが多いのですが、それは実は2番目で…1番辛かったのは“取り組める事業が無い時期”です。

学生時代に起業したり、次に何やるかを決めずにガイアックスを辞めて「何をやろうか」と考えている時って、本当に苦しいんですよね。身体は元気でもやれることがないというか。

事業を考案するというのはとても大変で難しくて、アイディアが浮かんでも「本当にこれでいいのか」という不安が後から後から押し寄せて、それを1つずつ潰したり検証したりしていくには時間がかかるので、ものすごくストレスなんです。
色々調べていると他の企業の話も目に入って「彼らは熱中しているのに自分はまだスタートラインにも立っていない」と焦ったり。

ピクスタも、アマチュアカメラマンの写真は売れるのか、本当に写真が集まるのか、どういう仕組みにしたらいいのかとか、いくらで売ったらいいのか…正解がない中そういうことをすべて決めていかなきゃいけない。それも含めて、とにかく事業を始めるまでが大変でした。

想像を絶する労力でしょうね…事業のヒントやアイディアは、どのように見つけていくのですか?

正解はありませんが、僕がおすすめするのはビジネスモデルからではなくて、もっと抽象的なテーマから考えていくことです。

僕がクリエイターの支援をしたいと思い立った当時は、一眼レフカメラが日本で一気に普及し始めた時期だったんですね。それまではみんなコンパクトデジカメで撮っていたのですが、一眼レフが流行ったことで高品質な写真が誰でも撮れるようになって、年間100万台くらい売れていったと。
写真投稿の掲示板みたいなものがいくつかあって、そこに物凄い数の写真が投稿されていることに気づきました。アマチュアカメラマンの熱量を感じる一方で、その熱量や才能を活かせる場所があまりない、自分がそういう場所をつくれば可能性があるのではないかと考えて立ち上がったのが、ピクスタのビジネスモデルです。

つまりピクスタで言う「才能をつなぎ、世界をポジティブにする」のような抽象的で自分が情熱を持てるようなところから決めて、そのテーマに沿って今の時代に求められる動きはなにがあるのかをリストアップしながらビジネスモデルを突き詰めていくという順番がスムーズかなと思います。

常にアンテナを貼っておくことが重要なんですね。

あとはやっぱり、僕は“3つの円”という言い方をしているのですが…1つは自分が取り組む大きなテーマ、もう1つは追い風となるような時代背景、最後は自分の得意なこと。この3つの円が重なる部分はどこかと考えると見えてくると思います。

僕は、もともとECサイトを運営していて成果を出せていたので、その得意と先ほどお話した2つのことが重なり、ピクスタとして成り立ちました。

働くとは、価値提供による社会貢献_
その根底に情熱があれば無敵である

最後に、様々な経験を積まれてきた古俣さんにとって“働く”とはなにか教えてください。

僕の場合は事業を通じて社会に大きな価値を生み出して、できる限り多くの人に喜びや生きがいや感動を提供して、その対価を受けてどんどん事業を大きくしたいという目的をもって働いています。

世の中で共通している“働く”とは、“自分の仕事で社会に貢献して対価を得る”ということなのではないでしょうか。
またその仕事に対して情熱を持てるかどうかで、提供価値も評価も、得られる体感も変わってきますから、情熱を持てる仕事を見つけられたら良いですよね。

編集後記

仕事の意義を考える時、提供価値や評価といったものに目が向いてしまいがちですが、大事なのは自分の内側にある情熱なのだということがよくわかるお話でした。
思った成果が得られないということは、そもそも自分が最も情熱を注げるものに出会えていないということかもしれません。人生を振り返って仮説を持つ。心に留めたいアドバイスですね。

編集:佐藤 由理

「ピクスタ株式会社」概要

2005年創業、翌年にデジタル素材マーケットプレイス「PIXTA」をリリースし、写真素材の販売を開始。以後、イラスト・動画・音楽素材と拡充し、2015年に上場(現グロース市場)。
2016年から家族・子ども向け出張撮影プラットフォーム「fotowa」、法人向け出張撮影「PIXTAオンデマンド」など撮影サービス領域にも事業を拡大。また、機械学習用のデータ提供サービスも開始するなど、様々なビジュアルニーズに対応するサービスを展開中。

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