CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回は、株式会社プラススイッチ・田村 俊太郎氏にインタビューしました。
田村氏がテーマとしている“ウェルビーイング”を軸にお話を伺う中で、ハードワークや上手くいかない時期などを“成長”に変え、幸せに働き、生きてゆくためのヒントが得られました。
※本記事は、2024年12月11日に開催した「CEO Talk」というイベントでの公開インタビューをもとに執筆しました。内容は、田村氏から参加者(大学生)へ向けてお話いただいたものです。
大学院の修士1年のタイミングでは、大学教授になるか、当時働いていた鉄緑会という塾の講師を正社員として続けるか、就職かという3つの選択肢がありました。
数学も人に教えることも好きだったので、塾講師を本命の選択肢として考えていたのですが、塾長さんに相談をしたところ「そう思ってくれるのは嬉しいけれど、一度社会に出た方がいいと思う」というアドバイスを頂いたことが、就職活動を始めたきっかけです。
就職活動を通じて、企業のことを知れば知るほど、企業で働くことにワクワクするようになっていきました。
「大好きな塾講師を辞めてまで働くなら楽しくないと意味がない」と思い、自分にとっての“楽しい”を自己分析したところ、自分は“成長意欲の塊”だと気付いたので、楽しさと成長を両立できる会社を探しました。
特にサイバーエージェントの社員さんたちは、出会った社会人の中でもすごく楽しそうでしたし、当時はITがかなり伸びていました。会社も勢いがあって、社員の皆さんも輝いていて、若手に裁量を与えられてチャンスを掴みやすい…ここでなら楽しさも成長も得られると思って、サイバーエージェントに決めました。
そうですね、働く時間は多かったです。
ただ、やらされていたらすごく苦痛だと思いますが、自分が好きで長時間働くってめちゃくちゃ楽しいんですよ。趣味と同じ感覚です。
自分で決めることが1番大事だと思います。
誰かの言葉で選択してしまうと、結局他人や環境のせいにしてしまってつらいし、成長しない。でも、自分で覚悟を持って決めれば、全ては自分の責任になりますし、成長にもつながるし、結果に悔いは残りません。
僕が生涯をかけて実現したいことは「目の前の人の幸せ」と「世の中へのインパクト」を両立することです。
目の前の人の幸せ(ウェルビーイング)の源泉にあるのは塾講師時代の経験です。
自分が教えたことで、生徒さんから「嫌いだった数学が田村先生のおかげで好きになりました」「田村先生のおかげで東大合格できました」といった言葉をもらうたび、生徒に良い影響を与えられたんだなとか、人生の選択肢を増やすきっかけがつくれたなと感じて、そういうことを仕事を通じてやれたらすごい幸せだなと思いました。
目の前の人の幸せだけを考えるなら塾講師を続ければよかったのですが、自分はそれと同時に「世の中にインパクトを与えることをしたい、より豊かな世の中にしていきたい」とも思ったんですよね。
そしてそれを成すには、経営力や事業をつくる力、チームをまとめる力など…汎用的なビジネス力が必要だと考えて、サイバーエージェントへ入社しました。
もし2014年当初の新卒就職活動をやり直すとしても同じ選択をすると思うくらい、サイバーエージェントは今でも大好きな会社です。
しかし、自分自身が人生をかけてやりたい「目の前の人のウェルビーイングと、事業活動を通じて世の中に伝播させていくこと」を考えた際に、前職にい続けるよりも自分で起業をする方が実現確度が高まるだろうと思えたことがきっかけで、起業に至りました。
プラススイッチではいつも「ウェルビーイングとプロフェッショナルの両立をしよう」と話しています。
ウェルビーイングという言葉の響きは、ホワイトな働き方や馴れ合うような印象を与えることがあるように思います。しかし、僕が定義するウェルビーイングのための重要な要素の1つは「人生の大半を捧げていること(仕事など)への納得感ややりがい」です。
プロフェッショナルとしてできることを広げていくからこそ、見える景色が変わり、やりがいを感じられるようになります。プロフェッショナルとしてチャレンジし続けるからこそ、飽きずに仕事を楽しむことができると思うのです。
つまり、高いレベルでウェルビーイングを実現するにはプロフェッショナルである必要がありますし、逆にプロフェッショナルとしてやっていこうとすると、サステナブルな働き方やウェルビーイングであることが必要。
プロフェッショナル性との重なりが大きくなることによって、ウェルビーイングの度合いも高まってゆくと思います。
守破離という概念があります。最初はその“守”_上司から言われたことや会社としてやるべきことを徹底的にやり切るということが最も重要だと思います。
ビジネスの世界では特に、自分のアイディアや、0→1でやることが上手くいくことはあまりありません。ですからまずは上手いやり方を模倣するところから始めて、その過程で「こうしたほうが良いんじゃないか」という工夫が見えてきたら“破”に入る。それが上手くいったら、自分のやり方として構築していく=離れていくという順番ですね。
これはあらゆる分野において、プロフェッショナル性を高めるための“鉄則”だと思います。
そして僕自身も、チャレンジしたい領域はまだまだあります。つまり、守のフェーズにある分野・領域がたくさんあるわけです。
僕もあらゆる分野において守破離を回し、ウェルビーイングも実現していきたいと思います。
楽しむコツなのかはわかりませんが、僕が苦しい中でも大丈夫だったポイントは2つあるかなと思います。
1つは、仕事が上手くいかない時も「自分の能力不足ではなく、やり方が悪いからだ」と思っていたこと。
「自分には能力が足りない」「自分の限界はここまでだ」など、自分自身の能力とかポテンシャルを疑うのではなくて、自分自身に何かが足りないわけではなく、やり方に課題があるのだと考えるようにしていました。そうすると下手に落ち込まず「なら次はこうしてみよう」と次のチャレンジにつなげることができます。
また2つ目は、当時の社長から「心で受け止めず、頭で捉えよ」という言葉を頂いたんです。
フィードバックや厳しい意見を心で受け止めてしまうと、苦しくなるし、ショックを受けると思います。そうではなく、ただ“フィードバックをもらった”という事象として捉えて、頭で理解するように心がけると、ご意見を真摯に受け止めつつ「ではどうするか」と建設的に考えられるようになっていったんですよね。
心でなく頭で捉えるということができるようになってから、だいぶ仕事の波を乗り越えられるようになったなと思います。
最後の「心で受け止めず、頭で捉えよ」という言葉が、特に深く刺さりました。
挫折や困難に遭遇することは、誰しもあります。しかしそれはその物事と真剣に向き合っているからこそだと思います。そんな時、その厳しさを乗り越えさせてくれるのがこの一言であり、越えた先にはプロフェッショナル性の高まり、そしてウェルビーイングが見えてくるのかもしれないと思いました。
若い世代にとってお守りになる、そんなお話でした。
編集:佐藤 由理
2022年創業。「Well-Beingの輪を広げていく」をビジョンに掲げ、BtoC事業者に対してデジタルマーケティング支援を行っている企業。
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