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年商30億円企業のCEOが、毎朝9時に出勤し続ける理由

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#世界がうらやむブランドをつくる#なぜ働くのか

1000万円出資するという話を反故にされ、無一文から、株式会社エス・ビルドを年商30億円の会社に育て上げた敏腕社長・澤口 貴一 氏にインタビューしました。
澤口氏は、その過程において仕事のモチベーションが「自身が生きるため」から「従業員からも社員からも必要とされる会社」へと変化していったと語ります。
澤口氏のストーリーから、仕事がもたらしてくれる大事なものが見えてきました。本記事は「なぜ働くのか」を見つめ直すきっかけになることでしょう。

株式会社エス・ビルド
澤口 貴一
澤口 貴一氏のプロフィール画像

京都産業大学 外国語学部言語学科 ロシア語専修卒業。2000年株式会社オービックオフィスオートメーションへ入社。
02年に株式会社チャータードジャパンへ入社し、03年株式会社リードインターナショナルを買取り、代表取締役に就任。04年、内装工事会社として株式会社エス・ビルドと商号変更。外部より役員を迎え、建設業許可を取得。

澤口 貴一氏のプロフィール画像

価値観は“共有”するのではなく、“共感”できる人たちで一緒に持てればいい

昨今の働くことへの価値観の変容をどう捉えていますか?

価値観は生きてきた時代や環境、経験によってつくられていくものですから、必ずしも共有することはできないと思っています。
戦争に出て命がけで戦っていたおじいさんの価値観を僕たちは理解できないし、おじいさんだって今の若者の価値観を理解はできないでしょう。

共有したり合わせたりしようとするのでも、無視するのでもなく、殊“会社”という組織で言うなら、価値観の合う人が集えば良いと思います。
建築業界に就労している人の半数は50歳以上、離職の可能性が一番高いのが22~25歳ですよ。その世界で無理により新しい価値観に合わせていく必要はないというのが僕の考えです。

澤口さん自身がなにを大事にしているか、教えてください。

組織の成長のために個人の成長が必須だとか、社員同士馴れ合わない、礼節を重んじるなど、基本的なことですよ。あとは自分の置かれた環境を不遇と思わず精一杯やる、とかね。
この春、こうした考えをまとめた「クレドブック」をつくりました。今後はこれに則り、共感してくれる人を採用していく予定です。

当然合わない人もいるでしょうが、それは仕方ない。色々な人に遠慮してブレてしまうよりも、会社としてなにが大事か示し、共感できる人を集めていったほうが組織は強くなるし、結局利益も出ると思うので、これは貫いていきたいです。

いくら年商を上げたとしても、変わらず働きたいと思うのは“生きるため”

創業当時からこれまでに、どのようなご苦労がありましたか?

事情があり、一文無しからのスタートでした。もちろん収入も0。きちんとした事業計画も資金もお得意先もない最悪の状況で、色々試行錯誤をしていたのですが、どのビジネスも上手くいかず…そんな時、1社目にいた頃お世話になった取引先のことを思い出したんです。

その取引先とは、内装工事の業者でした。
「特に営業を受けたわけでもないのに、そういえばいつもあそこに依頼していたな」「オフィスの内装工事を担う会社は世の中にあまりないのかもしれない」と思って、うちでもオフィスに特化した内装事業を始めてみた。これがエス・ビルドの始まりです。

当時はネットバンキングなんてなかったので、自分でATMへ行き、請求書に切手を貼って送っていました。事務所ではエアコンすら買えず、アルバイトの子が耐えかねて辞めてしまったし、乗っていたのは10万円の軽自動車でした。色々と苦労したし、従業員にも苦労をかけました。

心が折れてしまうようなことはなかったのでしょうか。

辛いこともありましたよ。
でも、独立前に勤めていた会社の社長がえらい豪快な「死ぬこと以外かすり傷」を地でいくような人で、その影響を受けていたからか、折れてしまうことはなかったかな。とにかく、生きるのに必死でした。

今や年商30億円超とのこと…現在のモチベーションは何ですか?

あの頃とは状況がまったく違いますが、個人的には結局は生きるためなのかな。使命としては、従業員からも社員からも必要とされる会社をつくることだと捉えています。

昨日M&A会社の方がいらっしゃって、エス・ビルドは1番安値でも20億、高値だと30億で買ってもらえるから「税金払っても15億残りますよ、ご勇退されては」と言うんです。
15億もらったら、好きな時にゴルフへ行けるし、海外に住むこともできるでしょう。でも僕はそれを想像して、あまりに退屈だと思ってしまいました。
社会から必要とされなければ存在意義を感じられないし、ゴルフでボールを池に落としちゃったとかスコアがいくつだとか、そんなレベルの一喜一憂の中で生きていたくない。刺激を求めている生き物としては、そんな凪のような生活は廃人同然だと。

僕は従業員と同じように、朝9時に出勤して18時まで会社にいて、365日のうち240日は働いています。仮に僕が今の働き方を辞めても、従業員が十分頑張ってくれていますから、業績は変わらないでしょう。ヴィ でも娘と同じ時間に起きて出勤して、メールをチェックして、ああでもないこうでもないと話してちょっと社員から煙たがられたりして(笑)そんな抑揚や刺激があってこそ生きていると感じるし、それには仕事が必要なんですよね。

澤口 貴一氏のインタビューの様子

従業員がいてくれるから追える“世界がうらやむブランドづくり”の夢を叶えたい

今後の展望をお聞かせください。

主力事業である内装工事はもちろん利益を追っていきますが、同時に、2020年から開発を始めた“レジン事業”を軌道に乗せたい思っています。
僕がコロナ禍に趣味で始めたレジンテーブルづくりを事業化したもので“社長の道楽事業”なんて言われてしまっているのですが、これをなんとか形にしたい。今ようやく製造本数が担保でき、素敵だねと言ってくれるお客様も増えてきたところです。

想像してみてください。百貨店に行ったとして、誰もがうらやむ国内ブランドって思い浮かびますか?
うらやまれるブランドって、ロレックスとかプラダ、バーバリー…ぜんぶ海外なんですよ。そして今から、それらよりも優れたブランドを立ち上げるのは困難でしょう。
でも衣服や宝飾品からの発信でなければ、まだ可能性があると思っています。

そこで、国内で採れる唯一無二の天然木を使ったレジンテーブルという家具から「メイドインジャパンの世界一綺麗なテーブル」のブランド「MURUI」をスタートしたわけです。このブランディングがうまくいけば、世界がうらやむブランドってつくれる気がするんですよ。
これはもう僕の夢ですね。従業員が主力の内装工事事業を支えていてくれるからこそ追える夢です。感謝しつつ、MURUIを通じて「日本から世界を目指せる」ということを従業員に示していきたいです。

編集後記

“仕事”というコインには、片面ずつ“物質的豊かさ”と“精神的豊かさ”があるのだと、澤口氏のお話から学びました。そして「どちらかが表/裏ではなく、いずれもなくてはならないものだ」ということも。
この記事は一見“起業ストーリー”ですが、いち社会人にとっても成長のヒントとなる言葉が随所に隠れています。共感できた言葉を拾い、今日からの指針としてみてはいかがでしょうか。

編集:佐藤 由理

「株式会社エス・ビルド」概要

2003年に創業した、オフィス内装工事を手掛ける企業。本社のある大阪にて順調に組織と事業を拡大させ、09年には東京支社を設立した。
システム事業/レジン事業と事業の幅を広げながら、年商は30億円を突破。創業20年が経過した現在も革新的なチャレンジを続けており、日々着実に成長している。

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