CEOの仕事観を聞くメディア「CEO VOiCE」。今回は、株式会社SAKURUG(サクラグ)の創業者である遠藤 洋之 氏にインタビューしました。
「テーマは西暦3000年」「隣の多様性」「“あなただから”の鎖をはずす」など、遠藤氏の仕事観の土台には、数々の斬新な哲学が!
1000年先を見据える経営者が今なにを考えているのか、少しだけ覗ける記事です。
みんな「あなたじゃなきゃダメ」と言われることに縋って、押しつぶされてしまっているんじゃないかと、すごく思います。
「あなただから採用した」とか「あなただからこの仕事を任せる」って言われることへ必死になって、誰でもできることだって言われると悲観的になる。でも「あなただから」という言葉に縛られて自分を見失ってしまうなら、無理に目指す必要はない。「気づいたらオンリーワンになっていた」くらいでいいと思うんです。
会社と人の出会いって運命ですよね。
例えば、今いるメンバーも、色んな偶然が重なりたまたまSAKURUGと出会って、たまたま話が進んでいって、たまたま入社して、今日まで働いている。でもその確率ってとんでもない、天文学的な確率なわけじゃないですか。だからこそ運命で、それを大切にしたいと思うんです。
はい。「みんなはSAKURUGじゃなくても活躍できるけれど、たまたまうちと出会って働こうと思ってくれたんだから、みんなの気持ちが変わるまで一緒に最高の会社を作っていこうよ」と伝えています。
同窓会へ行ったり昔の仲間と飲みに行ったりするように、もし別の会社へ行くことがあれば、将来僕ともそうしよう。もしここで働き続けたいと思えたら、ずっと一緒に働こうぜって話していますね。
昔ながらの「たくさん働かなきゃいけない」っていう考えは、体罰とすごく似ているような気がして、好きじゃありません。一方で自分の人生を振り返ると、厳しい環境に身を置いたからこそ成長できた瞬間もある。だから、この矛盾といかに向き合うかが大事だと思っています。
きっと、平均値や中央値を見て「このぐらい頑張るべきだ」と決めつけてしまうことがリスクなんです。「僕はあのゲンコツで頑張れたから、ゲンコツの1回ぐらいいいよね」 と思い込んでしまうような。
頑張らなくていいと言っているわけではなくて、人それぞれ許容できることが違うから、そこを理解して合わせていくべきだということです。
でもそうすると、日本が衰退していくみたいな論調が出てきます。たくさん働くからたくさんリターンがあり、それが幸せなんだという価値観。僕は、これもおかしいなと思うんです。
資本主義の歴史って、400年くらいしかないですよね。そんな短い価値観で自分の人生を決めてしまうのってどうなのかと思いませんか?
仕事観を飛び越えて、僕の人生のテーマは“西暦3000年”なんですよ。
自分のこんな短い生涯で解決できる問題には興味がなくて、それよりは“どうしたら、西暦3000年の子どもたちが笑顔になれるか”を考えています。
当然自分は生きていないだろうし、生きていたいとも思わない。だけど子どもたちが「生まれてきて良かった」と思える未来があって、そこで遠藤は知られていなくても、僕のしたことがなにかその子たちのためになっていたらいいなと思うんです。
たとえば、ドアノブってめっちゃ便利じゃないですか。でもドアノブを作った人が誰かは知らないし、ありがとうと言ったこともない。僕がしたいのは、そういうことです。
そしてこうやって1000年先を考えていると、自ずと1000年前にも目が向くんですよね。
徐々に徐々にですね。29歳で会社をつくった当時は、根拠のない自信だけがあって。創業時の不安定な環境の中、人がどんどん辞めていって、初めて「自分ってすごくないんだ」と。その中でも残ってくれたメンバーとか、入ってきてくれるメンバーに感謝を伝えたいと思いました。
でもそうすると、自分たちのやっていることに社会的価値がないとみんなが誇りを持てない。そうすると社会のことや、世界をもっと広く知らなくちゃって。世界を駆け巡っているうちに時間軸も伸びていった感じです。
だから正直、事業でいくら稼ぐかってことは、僕の思考の中心にはなっていないんですよ。
自分とは異なる立場の人に優しくすること、言うなれば“隣の多様性”ですね。それが世の中をより良くすると思っています。
仮にですよ。子育て支援をすることになったとして、幼稚園生の子の親が「幼稚園が1番大変なので1番補助してください」と、小学生の親が「小学生が1番お金がかかるんです」、妊活している人たちが「まず生まれるまでの支援をしてください」と言ったとします。こうなるともう、ダイバーシティじゃなくて、奪い合いじゃないですか。でもこれと近いことが、世の中の色んなところで実際に起きている。
1つのテーマでも、色んな主義主張があります。そこで自分がいい思いをするために該当する主張を通そうとしていたら、世の中は良くなりません。
会社も同じで、経営者は「経営者がすごい」とか「経営者は大変だ」とか言わないこと、思わないこと。
役職や立場を問わず「自分も頑張っているけど、隣の○○さんも頑張ってくれている」と言える。それが隣の多様性だと思うし、そういう会社にしていきたいですね。
いえいえ。なかなか理解や共感は得にくい考え方かもしれませんが、それはある意味“先を見通せている”ということでもあるのではないかと思っています。
僕にとっては 「そんなわけないじゃないですか」と言われるくらいがちょうどいい。事業も僕自身も、常にアップデートを続けていこうと思います。
「西暦3000年」というフレーズに衝撃を受けたものの、遠藤氏の価値観は新鮮であると同時に、どこか納得できるものでした。
もしかすると“1000年先を考える”土台に“1000年前から今日までの解像度を上げる”ことがあるからかもしれません。
これまでをじっくり見つめることで、未来が見えてくる。これはいち社会人にも同じことが言えるはずです。未来を考えるなら、まずは辿ってきた運命を見つめるところから始めてみませんか。
編集:佐藤 由理
システム開発やWeb制作を行う「QDXコンサルティング事業」、DEIを推進する採用マッチングプラットフォーム『Sangoport(サンゴポート)』を運営する「Sangoport事業」の2事業を柱としている。ブロックチェーン領域での研究開発など、幅広いジャンルにて展開しながら毎年増収を続け、2022年に創業10周年を迎えた。
現在は、東京本社のほか、和歌山・宮城・福岡と、全国に計4拠点を構えている。