CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回は、シェアフル株式会社・横井 聡氏にお話を伺いました。
新卒で入った会社が3ヶ月で倒産して以降「市場価値をどう上げるかというゲームの中で生きてきた」という横井氏。そのお話から“20代で知っておくと30代で差がつく”キャリア形成のヒントが得られました。
もともと大学では商学部の“投資管理論”という、ゴリゴリの証券アナリストを育てるゼミで、証券アナリストを目指して勉強していました。でも、就職活動の時期に「自分が本当にやりたいことはなんだろう」と迷ったんですね。
それで、大学在学中からデザインの真似事みたいな…劇団のポスターやサイトを作っていたのと、ゼミではビジネスのことを学んでいたので「あとはプログラミングをできれば1人でなんでもできるな」と思って。
かつ、当時は他と違う道を探していたということもあり、プログラミングを学ぶにしても大企業ではなくベンチャーへ行ってみようと思って、大学4年の4~5月頃、ベンチャー企業にインターンで飛び込みました。
はい。インターンではありますが、色々経験させていただきました。
ウェブサイトを構築したり、プロレス団体さんから発注いただいて大会用のリングマットを作ったり。1人で営業へ行ったり、投資家をお呼びして新規事業のプレゼンをしたり…いかにもベンチャーらしく多くのお仕事をしてきました。
色々やりながら、かたわらでプログラミングを勉強し始めたのですが、やっぱりプログラミングと向き合いたいと思い「プログラミングの仕事にアサインしてほしい」と伝えて、SIの案件に入れていただいたところから、エンジニアとしてのキャリアがスタートしました。
それが、新卒で入った会社が3ヶ月でなくなることに。
いよいよ倒産するという時、次の会社を紹介していただいたのですが、その会社がとても厳しくて…多忙なことはもちろん、職場の雰囲気もあまり良くなく、給与もガクンと下がりました。仕事が終わらず終電がない時間になってしまいずっと塩を振っただけのパスタしか食べられないような生活になりました。
でもそうなったのは、紹介された会社へ言われるままに入った=僕が人生のハンドルを自分じゃない誰かに預けてしまったから。それが悔しくて、ハンドルを自分に戻すにはやっぱり「明日会社がなくなっても自分の力でなんとかできる人材になるしかない」と思いました。
そして当時の僕には“プログラミング”しかなかったので、これにかけようと決めたんです。
2社目では「いかに人生のハンドルを自分へ戻すか」を考えて、自らの市場価値を上げることに全振りしました。
例えばエンジニアリングでも“Aの技術をできる人はたくさんいるが、Bの技術もできる人は5%しか市場にいない”というデータを見て、Bの技術を身につけるといったキャリアメイクをしていき、2年目には大きな案件のリーダーを任せていただけるまでになりました。
そのタイミングで転職してエンジニアとしての価値を上げたり、事業方面もできるようにしようと新規事業の立ち上げ責任者として転職したり。思えば20代は、明確に“市場価値をどう上げるか”という価値観(ゲーム)の中で生きていました。
そしてある時ふと「明日死ぬことはないな、会社がなくなってもなんとかなるな」と思ったんです。ずっと恐怖心をエンジンにして頑張ってきましたが、それを克服して初めて「なんのためにはたらくか」に向き合おうと思えました。
色々考えた結果、“選択肢がない個人の方の選択肢をどう広げるか”が自分のやりたいことだとわかりました。
世の中には、さまざまな制約条件に阻害されてその道を諦めざるを得ないような人たちがたくさんいる。そこに向き合い、改善したいと思ったんです。
そしてこれは、今シェアフル社で掲げている、“誰もの「はたらく」をひろげ、新しい「はたらく」をつくる”というミッションにつながっています。
確かに僕のように、市場価値を考え抜いて勉強し尽くして…という人も報われる世界であって欲しいとは思いますが、同時にそれを強要はしたくないなと思うんです。
選択肢がない方に対して「それはお前が頑張ってないからだ」と言われるような世界にしたくない。それはつまり「努力が足りなかったから選択肢がなくていいね」という世界じゃないですか。頑張りたくても何かしらの事情でそうできない人もいるのに。
でもプラットフォームをつくれば、結果が平等になるかはわからないけれど、“機会”は平等に近づけられるのではないかなと。これが僕の人生をかけてやりたいこと、今のエンジンですね。
唯一の答えなんて絶対なくて、100人いれば100通りの選び方があると思っています。
ただ自分がどうしたいのかわからないのなら、“次の一手が最大化するような道を選ぶ”のがいいのではないでしょうか。
これはオセロの考え方で…自分が一手打つ時、その一手でいっぱいとれることではなくて、一手を打って相手がもう一手打った後の自分の選択肢が多いように立ち回るっていう話があるんですね。会社選びもまさにそれだと思っています。
つまり、短期的に手取りが多いとか休めるとかで選ぶのではなくて、次のステージへ行く時に選択肢が最大化するような道を選んだ方がいいということです。そうすると自分がやりたいことを見つけた時に、たくさんの選択肢から選べるので。
スキルツリーをどう構築していくかという、フレームワークを持つことですね。
自分が持っているこれとこれを掛け合わせたら価値を出せるかもねみたいなところを、重点的に狙いに行く。
例えば学生時代インターンで営業をしていたとしたら、技術に触れられる会社を選ぶとか。技術もわかる営業職とか、営業もわかる技術職って結構レアリティが高いので、それをレバレッジに次のキャリアがまた選びやすくなります。
市場価値が高まれば、選択肢が広がり、自分の未来を明るくします。頑張れる人には頑張ってほしいし、そうでない人も“制限されない”世の中の実現へ向けて、僕自身も精進してまいります。
「頑張っていないからだと言われるような世界にしたくない」という一言に、横井氏の想いがぎゅっと詰まっていた気がします。困難に屈することなく進み続けた“力強さ”と、その先で得た“優しさ”が、ひしひしと伝わってくるインタビューでした。
自分が正しいと思う道を行くと同時に、違う道にいる他者をも尊重すること。私も、心がけていきたいと思います。
編集:佐藤 由理
シェアフル株式会社は“誰もの「はたらく」をひろげ、新しい「はたらく」をつくる”をミッションとし、パーソルホールディングス株式会社のグループ会社として2019年1月に設立した会社。スキマバイトアプリ『シェアフル』を提供している。