CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回インタビューに応えてくださったのは、株式会社SHIELD・米良 拓馬氏です。
「学生でさえ、働ける時間はそう多くない」という前提のもと、限られた時間の中で“働く”とはどういうことか理解し、自分の言葉で語れるようになるために必要な考え方を教えていただきました。
※本記事は、2024年11月13日に開催した「CEO Talk」というイベントでの公開インタビューをもとに執筆しました。内容は、米良氏から参加者(大学生)へ向けてお話いただいたものです。
よろしくお願いいたします。
さっそくですが、学生の皆さんは、“残りの時間”を意識したことありますか?
働くのは45年と仮定すると、アクティブに働けるのは9万時間です。これがどのくらいかと言うと…20歳になるまでに、人は17万5,200時間を過ごしています。つまり働ける時間は、実は皆さんがこれまで生きてきた人生の半分ほどしかないんですよね。
働くことを“自己実現”と表現する大人は多くいますが、そもそも働くとはどういうことか学び、ある程度の経験を経て、働くことを“自己実現”と捉えられるようになるまでには、あまりに時間が足りないと思いませんか?
僕が「周りから後れを取っている」と気づいたのは法律事務所に入った25歳の時で、その時にはもう8万時間くらいしか残っていなかったので「このままじゃヤバい」と。それ以降、時間の使い方に関しては強く意識してきました。
はい。でも必要以上に焦ってしまっていたために、最初の方は空回りしてばかりで…思うように成果を出せない日が続きました。
そんなある時、少し難易度高めのプロジェクトにアサインしていただいたんです。
連日失敗が繰り返される中「こうしたほうがいいんじゃないかな」と思いつつも「自分は周りより経験がないから」と、意見をせずにいたのですが、あまりに失敗が続くので、勇気を振り絞って「1日で良いから、僕のやり方でやらせてもらえませんか」と提案しました。
その結果、目標を見事達成できて…これがひとつの成功体験になりました。
ただ、僕はなにか特別なことをしたわけではなくて。
これまで生きてきた中で得た、“PDCAを回す”ことだったり、“ゴールから逆算してどうすれば良いか”考えたり、この状況や案件において“何がタブーか把握する”ことだったり…そういう経験や学びを踏まえて組み立てていっただけ。
それに気づいた時、自信が生まれたんです。自分が生きてきた中にも、ビジネスに活かせる部分はたくさんある。「自分もすでに武器を持ってるんだ」と。
今までの経験と自分がこれからやりたいビジネスを結びつけて考えられたことが、僕のターニングポイントになりました。
はい。例えば受験など、目標達成のために計画を立てて努力したこともあるでしょうし、サークル活動やバイトでも、仲間を見て、その中で自分がどう立ち回ればいいか考えて行動したということも立派な学び。社会でも活かせます。
僕は“社会人1年生”という言葉がすごく嫌いです。だってみんな“人間何十年生”なんですから。
「これはあれと一緒だ、あれが活かせるな」と発想して横展開できた人から、どんどん仕事が面白くなります。
ただその反面、それまでの行動はチャラにならないとも言えます。積み重ねがそのまま視座になるし、その先も重ねないと手札は増えていかない。これは就職でも転職でも、自分の事業を立ち上げても同じだと思います。
“死して後已む”、わかりやすく言うと“死ぬまで頑張る”という意味です。
当社は、情報セキュリティ関連の事業を展開しています。ITの中でもとりわけ新しいジャンルの最前線にいるので、新しいことをどんどん吸収して僕自身が成長していかないと、あっという間に取り残されてしまうんですよ。
だからずっと勉強を続けないといけないですし、変化を受け入れて自分自身が変わっていかないといけない、死ぬまで。
今偉そうにインタビューで「仕事とはこうです」なんてお話をしているものの、今日お答えした内容がベストアンサーだとか、このままでいいなんて全く思っていません。
僕もどんどんブラッシュアップしていかないと、すぐに負けてしまうと思っています。
そうですね。また成長には、1日ずつ少しずつ積み重ねるものと、一瞬でバッと変わるものの2種類があります。後者の上がり具合のことを、コンサル業界ではよく“成長の角度”と表現します。
誰かのやり方を真似してみたり、ちょっと考え方を変えてみたりしていると、革新的な気づきを得る・上手くいくことがあるんです。その時にしっかり角度をつけて大きく成長するには、なるべく自分に影響を与えてくれる人のそばにいるとか、身を置く場所を変えるとか、自ら環境を整えることが重要だと思います。自分の環境を整えてくれるのは自分だけですから。
お仕事の対価として色々なものを頂きますが、究極は“次の仕事を頂くこと”が最高の対価だと思っています。これは綺麗事ではなく「そうでないと経営を続けていけない」と、起業して痛感したからです。
コンサル業は無形なので、特に難しいんですよ。有形サービスのように明確に価値を図ることができない場合もある。
価格に対しての価値を明確化することが難しい中で「あなたに任せて良かった」「次もお願いね」と言っていただけることは何よりの信頼の証で、それこそが生命線…ズバリ働くことだと、僕は思っています。
ただこれはあくまで僕の考えで、中には“スキル1本で仕事をとっていく”スタイルの方もいらっしゃいます。
自分の性格を鑑みて、どちらが向いているかというのは何となく皆さんにもあるとはずなので、自分の思うベクトルで信頼を積み重ねていっていただけたらと思います。
お相手の話をよく聴くということを、すごく大切にしています。
解決策にはある程度法則があるので、正直なところ、どのコンサルに頼んでも提示される選択肢に極端な違いがみられないこともあります。
ただ、どの選択肢を、どの段階で、どういった言葉でお伝えするのか。ここにコンサルタント自身の人柄やセンス、そしてクライアント様とコンサルタントの相性が色濃く出ます。
それによって、クライアント様から信頼いただけるかが決まると同時に、双方にとって“本当にご一緒したほうが良いのか”わかるんです。
次の仕事を頂くためには、信頼関係を築くことがとても大事。そしてその基礎は“対話”にあるので、クライアント様に心地よくお話ししていただけるよう、人との関わりを通じて、日々学び続けています。
「強みは、これまで生きてきた過程にある」「みんな、人間何十年生である」という米良氏の話を伺い、背筋がシャキッと伸びました。
頑張ろうと思うほど「スキルを身につけなきゃ」と焦りがちですが「これまでの経験を、今の仕事とどうリンクさせられるだろう」と考えるとワクワクしてきます。学生にとって、社会人になることが楽しみになる、社会人にとっても勇気になるお話でした。
編集:佐藤 由理
2023年4月設立。IT・サイバー・情報セキュリティコンサルティング事業を手掛ける企業。
情報システム業務のアウトソーシングを主に請け負っており、ヘルプデスクからセキュリティ対策までワンストップで対応している。ISMS審査員の経験を基に、テンプレート化されたサービスではなく、1社1社に合わせたオーダーメイドの提案が可能であることが強み。