CEOの仕事観に迫るメディア「CEO VOiCE」。今回お話を伺ったのは、スターティア株式会社・笠井 充氏です。
「働く上で失くしてはいけないものがある」「日曜日の夜が怖くない人生を手に入れろ」「本当の強みに気づく瞬間が来る」など、多数の金言に付随するのは、大人が思わず「学生時代に聞きたかった…!」と唸るエピソードたちです。笠井氏の真意を知り、あなたの視座をひとつ上げてください。
1つ目は、財政基盤がしっかりしていることです。
地震やコロナウイルスの流行からもわかるように、いつ働けない状態になってもおかしくありません。また、プロダクトが売れてもすぐに凌駕するような新商品が出てくる時代。変化し続けなければ、企業は生き残れません。
仕事が止まっても半年程度は給与を支払える、そして常に新規ビジネスへ挑戦できるくらい資金力があることが重要です。
2つ目は、差別化された商品/サービスを持っているか。
入社すると、その会社のプロダクトをお客様へおすすめする立場になるわけです。社会的価値の高いものでないと、そのビジネス自体も、自分のモチベーションも続かないでしょう。
そして最も見るべきなのは、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)が企業活動とリンクしているかです。
設定するだけでなく、それに基づいた活動ができていなければ会社の成長にはつながりません。そういう会社か見極めるには、面接官に聞いてみるのがおすすめです。きちんと実践している会社なら、面接官は喜んで、自分の言葉で話してくれるはずです。
基盤がしっかりしていて、誇れる商材を持ち、達成すべきところに向かっている。そうした企業は社会から必要とされますから、おのずと伸びていくと思います。
いえいえ。やっぱり最初の環境はとても大事ですから。社会人1~2年目をどんな会社でどう過ごすかが人生を決めると言っても、過言ではないと思います。
私は新卒で入社したのが超厳しい会社だったんです。上司はよくそこまで怒ってくれるなと思うくらい厳しく、当然仕事も忙しかったのですが、そのおかげで視座を高く持てました。
最初に緩さを覚えてしまうと、その後頑張れる幅が狭まります。やらざるを得ない環境に置いてもらえて、本当にラッキーでした。
経験や人付き合いのために使うお金と時間は、惜しまないことです。
その経験から自分の強みが見つかったり、人とのご縁がビジネスチャンスになったり。その時損したと思っても、人生にはなんの影響もないどころか、生きたお金として何十倍にもなって返ってきます。
若い頃の1万円ってすごく大切ですが、人生を決めるような額ではありません。目先のお金を惜しまず、経験に投資する感覚を身に着けたほうが良いです。
私は平成初期から働いていますが、時代には良い点も悪い点もありますから、改善していくという意味で“働き方改革”は悪いものではないと思います。
ただ一方で、働く上で失くしてはいけない部分が忘れられてきているようにも感じますね。
“社会の中で、自分がどう役に立つか”です。
これを確立できれば、仕事に対してやりがいや充実感を得られますし、対価も増える。そして、仕事がなによりも楽しいことになる可能性もあるわけです。
私自身も今となっては仕事が非常に面白く、学生や若い世代には「日曜日の夜が怖くない人生を手に入れろ」とお話しています。
でも現代でその感覚を持っている人は非常に少ない。
お金があれば幸せとは言いませんが、仮に仕事の充実度を測る指標に年収を用いて“1000万円以上”で絞ると、その領域にいる人は5%程度なんですよね。
働き方改革は本来、この5%の人たちを増幅するためにあるべきで、楽に働けるようにするということではないと思っています。
自分の強みに気づき、それをどう仕事に変えていくか考えること。そうして、社会と自分にとって価値の高い仕事にたどり着くことです。
まずは労力をいとわず、たくさんの経験を積んでください。
本当の強みは、仕事を通じて色々な成功/失敗体験を積んだり、人とのかかわりの中で褒めてもらったりする中で、だんだんと明確になっていくものです。そしてある時「自分が使うべき強みってここなんだ」とわかる瞬間が来ます。それは、20〜30代を真剣に頑張ってきた人間にだけ訪れる瞬間です。
まだそこが見えてこない20代は、楽を覚えている場合ではないと思います。
40代からやろうと思っても遅いのです。その頃には若手ほど期待をかけてもらえないし、自身の体力や気力も落ちているでしょう。1番頑張れる時間に力を抜いてどうするのか、たどり着かないぜと言いたくなります。
素直かつ負けず嫌いでいること。そういう人が1番伸びると思います。
自分の意見は持っていて構いませんが、変に凝り固まらず“正しいかどうかはわからない”という前提を持っていたほうがいい。
なにかの本を読んだら考え方が左右されるとか、誰かの話にストレスや感動を覚えるとか。自分の考えは、色々なことに影響されながら決まっているものだと理解して、それを自分の進化につなげていけたらいいですね。私自身も、常に心がけています。
また、大谷選手が50本ホームランを打っていて評価されるのは、他にそれだけ打つ人がいないからじゃないですか。みんなが50本打っていたら、たいしたことない。
自分の成果だけを見て満足するのではなく、良い意味で周囲と比較して、努力し続けられることも重要です。
そしてこういう人で会社が構成されていると、普通の基準がどんどん上がって、会社が成長していきます。当社にもそんな仲間を迎えながら、皆で上を目指していきたいと思います。
働く上で時代に適応していくことは重要ですが、時代に流されることと乗ることは違うのだと、笠井氏のお話から感じました。
時代(ある意味では楽な方)に流されず、“普遍的な真実”と“時代に沿った価値観”を両立しましょう。そうして走り切った先に、自分の未来が拓けます。
編集:佐藤 由理
1996年、有限会社テレコムネットとして設立。回線取次事業を始めとして、中小企業のさまざまなニーズに応えながら取扱商品を拡大し、2004年に商号をスターティア株式会社へ変更した。(現:東証プライム上場スターティアホールディングスグループ)
05年に東証マザーズへ上場、14年には東証一部へと市場を変更。現在は東京本社のほか、仙台から熊本まで全国的に店舗を展開している。