株式会社サマリー 代表取締役CEO・日下部 康介氏にインタビュー。日下部氏の人生やサマリーのバリューについて伺う中で、最速で成長する・ポジティブにキャリアを積み上げていくために必要なヒントが得られました。
このやり方で、この道で「合っているの?」と不安な方にこそ読んでいただきたい記事です。
学生の頃から起業や経営に興味があって、就職活動の際にも「経営者になるための修行を積めるようなところがいいな」と思っていました。
当時のミスミが新卒採用向けに「次の経営者を志すもの、この指止まれ」というキャッチコピーで採用してたんですね。また代表だった三枝匡さんのこともすごく尊敬をしていたんです。憧れの方が次の経営者を育てる場を用意した、ということでまず惹かれました。
面接を通じて、1年目から製造~お客様対応までを担当できると知り、部分最適ではなくて全体最適の判断が自然に磨かれていくような仕事であることにも興味を持ち、入社を決めました。
ミスミでのキャリアも4~5年目を迎え、海外の現地法人の立ち上げをやらないかと誘っていただいたのと同じタイミングで、大学の先輩…前代表にあたる山本(現サマリー社顧問)から「一緒に会社を立ち上げないか」と声をかけてもらったんですね。
悩みましたが、海外で働くチャンスはこの先にもあるかもしれない。一方でその頃の「スタートアップ」と言ったら本当に極貧生活から始まるものだったので、こういうチャレンジをできるのは、結婚もしていなくて子どももいない…身軽なうちだなと思ったんです。
ないですね。
実は会社を立ち上げるタイミングで、ミスミ時代の同僚や先輩、個人的に仲良かった人たちからエンジェル投資として応援してもらったんです。
「彼らが僕に期待してくれたことにしっかりお返ししたい」という責任感をすごく強く持ってやってきたので、大変なことはそれはたくさんありましたが、常に「どうやったらこの難局を乗り切れるか」と考えていました。
また当社のバリューに“Move Fast, Fail Fast”があります。「失敗はどんどんしよう、そこから素早く学びを得て次のトライに移していくことが大事」と、会社としても自分自身としても心がけているので、落ち込んだり折れたりすることはありませんでした。
僕らのサービス領域に、MVP(ミニマム バイアブル プロダクト)という概念があります。
検証可能な最小単位の製品プロダクト、いわゆるプロトタイプを早く作成し、お客様に触っていただきフィードバックを早めに受けて、作り込んでいく方法です。
最初から突き詰めようとするとキリが無いので、まずはアイディアの筋が良いか悪いかを試すためには最低限なにが必要か整理して、それをつくる。アイディアはなるべく早くお客様にぶつけるということを習慣的にやっていけると成功確率を上げられるのではないでしょうか。
世の中へ価値を届けるために協働すること、ですかね。
僕は「仕事を通じてこの時代に生きたポジティブな証をすこしでも残せたらいいな」と思っている人間なのですが、僕1人でできることは非常に限られています。
だからこそ、自分と違うスペシャリティを持っている方たちと上手く力を合わせていくことがものすごく大事なので、世の中に届けたい価値を共有しあって協働することが仕事なのかなと思います。
昨今はコスパ・タイパといった言葉が流行しています。収納サービス関連では、スペースパフォーマンス“スぺパ”(空間対効果、空間の利用効率を良くする暮らし方)というワードも話題になっています。
僕も効率化を求めるという価値観は良いものだと思いますが、もっと重要なのは、それによって捻出された時間や余力で何をするかなのではないかと思うんです。
よく言われる「量をこなす」「1000時間やるとセミプロになる」といったことは、正しいと思っています。遊びでも仕事でも勉強でも良いので、効率を上げて捻出した1000時間を使ってなにかしらに夢中になるという経験をしておくと、エッジがたった魅力的な人間になれるのではないかなと思います。
すごいパシッとした答えにならなくて申し訳ないのですが、そんなもんなんじゃない?と思ったりもするんです。
僕が割と好きなキャリアの考え方に「キャリアドリフト」がありまして。
「キャリアプランニング」というと、こういう経験をしてこういうスキルを取ってその後こういうことやって将来こんなことやりたいんだと、緻密に設計された1本道をつくらなくちゃいけないと思うじゃないですか。
それに対してキャリアドリフトは、節目節目で自分が進みたいキャリアの方向性だけを決めて、おおよそそっち側に行ってるなと思えるなら、いったんは流れに任せるという考え方です。
具体的に言うと、例えばはじめはCEOになりたいと思っていたものの、営業に配属されてその後マーケをやりましたと流れていったとしたら、まずはそこで頑張ってみるんです。その中で「自分はカスタマーと向き合うことが好きなんだ」という事に気づき、節目のタイミングでCMOを目指すようになりリサーチの部署に手挙げするみたいな。
自分のこれまでの経験を肯定して、それを踏まえてできることはなんだろうと、節目節目で方向性を修正していくというものなんですね。これを知って僕は気持ちが楽になりました。
やりたいことなんて、最初からはわからないものです。キャリアの8割は偶然で出来ているということも言われていたりします。
自分の価値観と合っているなら飛び込んで頑張ってみる、その経験から自分になにが向いているのかを突き止めて、その次を考えて…と進んでいくと、振り返った時に「自分の経験はこうつながっていたんだ」とわかってきてやっと、明確なキャリアプランを描いていけるのではないかなと思います。
キャリアドリフトの考え方を知って、私も肩の荷が下りた気がしました。
不安になるニュースがあふれる時代にキャリアを始める私たちは、つい「道を間違ってはいけない」と思ってしまいがち。しかし、未来を見ようとしても仕方がないし、なにより今の自分が幸せではない。先を憂うのではなく、まずは目の前のことに一所懸命になってみようと思いました。
編集:佐藤 由理
2010年設立。「テクノロジーで「所有」のあり方をアップデートする」をミッションに掲げ、物理的なスペースにとらわれない収納サービス「サマリーポケット」(※)を運営している。
※荷物を専用ボックスに詰めて送ると、空調・セキュリティが徹底管理された環境で保管。宅配便を活用することで居住地域に関係なく、預けたモノを確認したいときも、取り出したいときも、自宅にいながらスマホ一つで操作が可能。