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さんまさんと全国の爆笑をかっさらった
チーフプロデューサーの、脳内と情熱に迫る

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#TBS#バラエティ番組制作#明石家さんま

今回お話を伺ったのは、株式会社TBSグロウディアの代表取締役社長、園田 憲 氏です。
1980年代よりバラエティ番組制作を手掛け、テレビ界を牽引してきたチーフプロデューサーの園田氏。「誰にも相手にされなかった」AD時代に考えていたこと、視聴率が目標から責任に変わっていった過程と、今思うことまで…たっぷり語っていただきました。
“生み出す人”の頭を少しだけ覗ける、ワクワクするインタビューです!

株式会社TBSグロウディア
園田 憲
園田 憲 氏のプロフィール画像

早稲田大学を卒業後、TBSへ入社。「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」「さんま玉緒のあんたの夢をかなえたろかSP」「さんまのスーパーからくりTV」など、数々の人気バラエティ番組の演出を手掛けた。
編成部長、経営企画局長などを歴任し、現在、TBSホールディングス グループ上席執行役員/TBSグロウディア代表取締役社長を務めている。

園田 憲 氏のプロフィール画像

全国を爆笑させるため、寝ず食わずで働いたAD時代

新卒でTBSに入社されて、長くキャリアを積まれてきたんですよね。

はい。1985年に入社し「8時だョ!全員集合」に配属されてから、2004年まで現場にいました。くりぃむしちゅーさんの番組の演出を最後に現場を離れ、その後は管理会計部門、経営企画などを経験しました。

番組制作に関わった20年と、現場を離れてからコーポレート部門を渡り歩いた10年余りの間…本当に色々と勉強させていただいたし、出会いにも恵まれたなと思います。

実は、就職浪人をして2年目でようやく入社できたんです。苦労しましたが、諦めなくてよかった。TBSに入っていなかったら、きっと今の自分も家族もなかっただろうと思います。

特に心に残っている学びを、ひとつ教えてください。

色々ありますが、例えば「8時だョ!全員集合」にいた頃…まず、誰にも相手にされなかったんですね。僕はTBSの社員ADとして全体を仕切る立場だったんですが、周りはその道10年のスタッフたち。新卒ADの指示なんて誰も聞いてくれない。

そんな時、朝方の中華屋で、あるディレクターの方が言ってくださいました。「おまえ、やりたいことがあってTBS入ったんだろ?だったらまずは、作りたいものを作る環境を作るんだよ」と。
目が覚めたような気持ちになりました。自分がやりたい番組/やりたい仕事はなにかさえ明確になっていれば、今の苦労はそれを達成するための修業だと思えばいいのかって。

さんまさんが笑ったら「ヨシッ!」_30代で感じた、仕事のやりがいと苦労

当時の目標は何でしたか?

自分が思い通りに作った番組をヒットさせ、全国を爆笑させること”。
それを叶えるために足りない部分はどこかと考えると、やるべきことがどんどん明確になっていきました。
それからはいかに周りを巻き込み、動いてもらうかを考え、実行に移す日々。寝ない食わない20代でしたが、とても充実していたし、その時間こそが未来を拓いてくれたなと思います。

思い描いた番組を作れたのは、いつ頃のことでしょうか。

32歳ぐらいからかな、だんだん自分の思い通り作れるようになってきて、そこから42歳まで没頭しました。

明石家さんまさんと10年ほどご一緒させていただいたのですが、その期間はもう「さんまさんをどう笑わせようか」ばかり考えていましたね。さんまさんが笑う企画やVTRを作ると、必ず数字も取れましたから。
みんなで新しい企画を必死に考えて、打ち合わせでさんまさんが笑ったら「ヨシッ!」と(笑)「さんまのスーパーからくりTV」では、有難いことにヒット企画が続々出ました。

園田 憲 氏会話の様子

自分にできる限り、放送業界と組織へ力を尽くしていきたい

その後TBSグロウディアを創業されて、以降は組織づくりにも注力されているとか。組織づくりにも以前から興味があったのですか?

いいえ。2010年頃でしょうか、リーダーシップに関する、ある方の研修を受けてからです。

会議で出た発言に対して「面白い!」とポジティブに伝えるとか、「どうすればいいか?」と尋ねてくる社員に「あなたはどう思うの?」と聞き返すことで主体性を持たせるとか。
研修で教えていただいたことが、制作現場時代に叩き込まれたことと似ていたので、その重要性がよくわかって、TBSグロウディアでもしっかりやっていこうと。だからこれまでは、僕が主導で研修を行ってきました。

社長自らそうした研修をされるのは、めずらしいなと思います。

「社長がいつまで粘っているんだ、次の世代に渡さなくては」と思いつつ(笑)直接社員と対話できるので、すごくいい機会になっています。

そして面白いのが、組織づくりってバラエティ番組を作ることと似ているんですよ。
ドラマは10話で完結するけれど、バラエティはヒットすると会社が終わらせてくれないんですね。最近だと「世界ふしぎ発見!」がこの春、36年(!)で歴史に幕を下ろしましたよね。
終わらないということはすごく苦しいけれども、新しい企画やキャスティングやらを考えて、いい結果が出ると、またどんどん面白くなっていく

組織づくりも同じで、日々マネジメントや研修を行うには労力が要るし終わりもないことですが、続けていけば必ずいい会社になっていく。そして業績も上がっていくんだと思います。

素晴らしいですね。最後に、園田さんにとって働くとはなにか聞かせてください。

“人の役に立つ”ということじゃないですか。僕は、あらゆる仕事は、誰かに喜んでもらうためにあると考えています。

その中でも番組制作は、手ごたえが感じやすかった。
明確に視聴率が出るし、視聴者からの感想も届くし、自分の企画がブームになって流行語が生まれたり起用したタレントさんが売れたり。色々な部分で“どれだけ喜んでもらえたか”がわかるから、とてもやりがいがありました。

キャリアも終わりに差し掛かり、働く意味を自問した時期もあったのですが、当社の存在意義とか社会貢献とか小難しいことよりも、シンプルに“人の役に立つ”。僕はそういうことをしたいんだなと改めて思ったので、これからもその気持ちだけでやっていこうと思います。

番組がいつか終わるように、僕ができることにも限界はあります。ただお世話になったこの業界と、今いてくれる社員のために、できる限りのことはやっていきたいです。

園田 憲 氏勉強会の様子
編集後記

「作りたいものを作る環境を作る」_これは番組制作だけではなく、どんな仕事にも通ずる考え方だと思います。 やりたいことが明確に持てれば、苦労すら“軌跡”として前向きに捉えられることでしょう。
忙殺されそうになった時こそ“どうしてここにいるのか”を見つめ直すこと。そこから少しずつ、未来が拓けていくはずです。

編集:佐藤 由理

「株式会社TBSグロウディア」概要

2019年にTBSグループ7社の合併により設立され、国内海外への番組販売などのコンテンツ事業、ショッピング事業、イベント/ラジオ番組の制作および、IT事業などのサービスを行っている。TBSテレビと並ぶ、グループの主要子会社のひとつ。

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