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20年間の採用広告費は驚異の0円!
なぜてっぺんに人が集まるのか

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#100人の経営者を送り出す#働きがいのある会社

CEOの仕事観を聴くメディア「CEO VOiCE」。今回は、株式会社てっぺん・和田 裕直 氏にインタビューしました。
和田氏曰くてっぺんは「人が集まってくる会社」だそう。驚異の「20年間採用広告費0円」という実績の背景にあったのは、仕組みでも条件でもなく、和田氏のある「想い」でした。

株式会社てっぺん
和田 裕直
和田 裕直 氏のプロフィール写真

エコール辻調理師専門学校卒業後、渡仏。
三つ星フランス料理店「Regis et Jacques Marcon」で修行後、東京の恵比寿一つ星レストラン「Le jeu de l‘assiette( 現A nu, retrouves-vous owner chef)」下野昌平シェフのもとで修行。
22歳で株式会社てっぺんに出会い、輝いて働くことの重要性を知る。同社店長、総料理長を経て、社長就任。

和田 裕直 氏のプロフィール写真

過去を手放し、新しい価値観に合わせ組織を変化させていく

若者の価値観の変容について、どう捉え、対応していますか?

価値観は、特にコロナ禍を起点に大きく変わってきていると思います。漫画の流行りで見るとわかりやすいです。

例えば昔は「巨人の星」「空手バカ一代」といった漫画に代表されるように、とにかく鍛錬を積んで強くなっていくという考え方が主流でしたが、今人気があるのは「キングダム」や「鬼滅の刃」。つまり現代で大事にされている概念は、仲間とか愛、楽しさなんですよね。

僕らはこうした新しい価値観に合わせて組織を変化させることを、常に心がけてきました。
おかげさまで実は、創業社長の頃から今までの20年間、1円も採用広告費をかけずに経営できています。人を“集める”というより、人が集まってくる会社であることは、ひとつ誇れるところですね。

採用広告費0円なんて、初めて聞きました。

これもひとえに、ついてきてくれるメンバーのおかげです。
今でこそこんなふうに語っていますが、僕はかつて、すぐキレるし酒癖も悪い最悪な社長だったんですよ。圧力を掛けることでメンバーを従わせていました。

でもそれは瞬間的に人を動かせるだけで持続性がないのだと、ある出来事がきっかけで痛感して。それ以降、考え方を改めました。

転機になった一言「タイガーさんは正しい、だけど怖いというだけで響かない」

どんな出来事だったのでしょうか。

ある店舗の店長が、焼き鳥をのせたお皿にマヨネーズで“〇〇さん今日もお疲れ様です”と書き、小さなアヒルのおもちゃを乗せて出していたんです。
僕はそれをお客様のインスタグラムで見て知って、すぐ彼女へ電話をかけ「皿におもちゃのっけてんじゃねえ」と、ひどく叱りました。
翌日彼女から謝罪があり、いいよと言って解決したつもりだったのですが、1週間経っても彼女のモチベーションが上がらない。僕はその子を励ます意味で、ランチに誘いました。

色々話して、デザートが出てくる頃「もっと言いたいことないの?」と聞いたら、(僕はみんなからタイガーと呼ばれているのですが)彼女が泣きながら「タイガーさんは正しいことを言っているしやっていると思いますが、怖いってだけでなにも入ってこなくなります」と言ったんです。

恥ずかしいことに、僕はその言葉で初めて、自分が怖がられていると知りました。それで、彼女を変えるのではなく、僕が変わらないといけないと思ったわけです。

その方も、勇気が要ったでしょうね。

そうだと思います。本当に感謝しています。
その日を境に、僕は不機嫌にならず、みんなの前にいる時は絶対にニコニコすると決めました。初月はみんな驚いていましたが、2ヶ月3ヶ月とその姿勢を貫いていくうちに、会社がみるみる変わっていったんです。

まず、会議。これまでは誰も発言せず僕の話を聞くような時間だったのが、みんなが積極的に話すようになりました。人間は自分の発言に責任を持つので、店長が提案してきたことを「いいんじゃない」と言うだけで、それが形になっていく。

あとは僕がお店へ行くと「うわ、タイガーが来た」って、空気がピーンとなっていたのもなくなりました。当時これはいいことだと思っていましたが、それは勘違いでした。結局僕が出ていくとお店の空気がだらけるんですよね。
今は僕が行っても空気は変わらず「タイガーさん珍しいっすね」程度ですよ。これがベストだと思います。社長のテーブルを1番気遣う店なんてダメです。

こうして会社が変わっていくにつれ、業績もバコーンと上がりました。

“今日働いてくれている”メンバーが胸を張れる組織づくりを

大きな改革を経て、今後の経営や組織づくりについてはどうお考えですか?

まず組織の中では、生命力=“自分で決める力”を持った人間を育てていきたいと考えています。
生命力のない人は、すぐ・すべて他人に委ねてしまう。「こうなると聞いたからこの会社に入ったのに」「いつ給料を上げてくれるのか」とか。それは自分の可能性を狭めることだと思います。

自分で決められれば納得して進めるし、やりがいも楽しさもその先にあります。自分の人生ですから、うちで働いてくれている子たちには、そういう力をつけて欲しいですね。

また個人的には、人生で「100人の経営者を出したい」という大目標があります。吉田松陰さんの松下村塾じゃないですけど、志高い経営者を100人世の中へ送り出せたらいいなと。

実際に、去年からサウナ、フィットネス事業を渋谷のど真ん中でやらせていただいていたり、豊洲からお魚を買わせていただく仕入れ事業も始めていたりします。
メンバーと一緒に新しい事業を立ち上げて、その事業を譲渡していく。100人の経営者と一緒にホールディングスをつくるみたいな。そういうビジョンです。

素晴らしいですね。

いえいえ。最後に、最初の話へ戻っていいですか?なぜ、うちに人が集まってきてくれるのか。
それは“今日働いてくれているメンバーの満足度を上げる”ことに注力しているからだと思っています。

うちは、社内環境を整えることやイベントの企画はもちろん、メンバーの大切な人まで大切にするようにしています。例えば、1ヶ月で最もお客様の笑顔を創出したメンバーをMVPとして表彰するのですが、その賞与や賞品をご家族に贈るんです。
「うちで働くことを応援してくださってありがとうございます」と伝えることで、メンバーの大切な人が応援者になってくれるし、本人の誇りも生まれます。

今いてくれるメンバーが、大切な方へ「うちの会社はいいよ」と胸を張って言えるような組織をつくる。常にここと向き合ってきましたし、今後もそれは変わりません。

自分のビジョンを持ち続けながらも、その前提にはメンバーがいるのだと、いつも忘れず、なにより大事にしていきたいと思います。

編集後記

自身が培ってきた常識やスタイルを手放すのは、とても勇気が要ること。歳を重ねるほどに、その難易度は増していくのでしょう。
しかし、いちメンバーの一言が和田氏を変え、和田氏の変化が組織を引き上げていったことからもわかるように、成長には変化が必須です。
明日からの自分や環境、得られる成果などすべては自分次第だという事実を、ポジティブに捉え“変わる勇気”を持つことから始めてみると良いかもしれません。

編集:佐藤 由理

「株式会社てっぺん」概要

2004年、居酒屋から日本を元気にすることを目的として、大嶋 啓介氏(現:取締役会長)が設立した企業。大きな声で自分の夢や目標を語る“公開朝礼”がテレビや雑誌等で取り上げられ、話題となった。現在では国内外問わず、年間約1万人もの人が朝礼へ参加している。
和田氏が社長就任後は、居酒屋事業を中心に、フィットネス事業、サウナ事業、仕入れ事業などにも注力。第二創業期を迎え、絶えず新たな挑戦をしている。

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