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「24時間働けるくらい楽しくて仕方ない」
仕事に没頭できる自分になるには

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#2代目CEOの経営戦略#鈍感力#好きを仕事に

キャリアや苦労から、CEOの仕事観を紐解くメディア「CEO VOiCE」。今回インタビューさせていただいたのは、株式会社ティムコの酒井 誠一氏です。
転職文化に対する所感と酒井氏自身の仕事との向き合い方、ティムコの経営方針など幅広く語っていただく中で、時代に左右されない普遍的なヒントが得られました。特にキャリアをスタートしたばかりの20代にこそ読んでいただきたい記事です。

株式会社ティムコ
酒井 誠一
酒井 誠一社長のプロフィール画像

1968年東京都生まれ。明治学院大学経済学部を卒業後、91年に富士ゼロックス株式会社(現・富士フイルムビジネスイノベーション株式会社)に入社。92年11月、父親が創業した株式会社ティムコに移籍し、社長室長として上場準備に関わった。
96年にティムコは日本証券業協会に店頭登録後、社内の様々な業務を経験し、2011年2月に代表取締役社長へ就任。

画像引用元:株式会社ティムコ公式サイト(https://www.tiemco.co.jp/company/message.php

酒井 誠一社長のプロフィール画像

時代によってもたらされる価値観を、正しく分析する

昨今の仕事観の変化をどう捉えていますか?

私たちは、フィッシング ・アウトドア関連用品の企画開発から販売までを行っている会社です。
近年ライフワークバランスという言葉が一般的になってきましたが、もともと“人々の余暇をいかに豊かにするか”ということを事業としているため、以前から働くことと遊ぶことを同等に大事にしてきました。この点、時代の変化に対する影響はありません。

ただ、転職文化になってきたことは強く実感しています。自分がトライしたいことを見つけたり、ストレスを感じてしまったりすることがあれば、素早く舵を切る。特に若い世代を中心に、よりライトな感覚で仕事を選べるようになってきましたね。

それによって良い点も悪い点もあると思いますが、酒井さんはどうお考えですか?

昭和世代ということもありますが、やはり継続は大事だなと思っています。ひとつのことに向き合い続けることで学べることは多いですし、柔軟性やストレス耐性もつきます。

私自身、新卒で入社した富士ゼロックスで、色々なことを経験させていただきました。「僕の身体の半分は富士ゼロックスでできている」と言っても過言ではないくらい、そこで培った価値観が今の自分をつくっていると思います。

また経営者として、一生懸命育てた社員が充分に力を発揮しないうちに辞めてしまうのは痛手でもあります。できればある程度頑張ってもらえたほうが有難いなと思います。

個人と会社双方にとって、継続はプラスに働くということですね。

基本的にはそうだと思います。一方で、個人のことだけを考えるなら転職文化も悪くないのかもしれないと、最近思い始めてきました。

例えば、私が就職した1991年頃って、広告代理店が人気だったんです。私よりさらに遡ると製鉄会社などがすごく人気のある時代でしたね。今はまた別の業種が人気になっています。
つまり、今の価値観が20年後30年後まで続くわけではないので、キャリアを積みながら時代に合わせて転職するというのは賢い選択なのかもしれないと思うのです。

仕事に没頭できる自分になるために必要なのは、
ネガティブへの“鈍感力”

酒井さんは新卒入社の翌年に、お父様の会社へ入社されていますよね。

はい。上場準備のためにと声をかけられました。通常は経験者を採用するのですが、実際に関わったのは新卒と私の3人だけ。全くわからないところからのスタートでした。
証券会社を訪ねて「この言葉がわからない」と、1から教えていただいたり、監査法人の方やコンサルティング会社の方に助けていただきながら進めていきました。

大変でしたが、上場までの短期間で非常にたくさんのことを学べましたし、当時お世話になった方とはいまだにつながりがあります。そうしたご縁も含めて、経験させていただけて良かったと思います。

時代が移りゆく中でも、仕事において大切にすべきことは何だと思いますか?

やはり仕事を楽しめることが非常に重要だと思います。例えば24時間寝ずに遊んでも、身体は壊れるかもしれませんが、心は疲れませんよね。それは楽しんでいるからです。

仕事も、楽しくて仕方ないと感じると、自然ともっと働きたいと思うようになります。すると、どんどん次のステップへ挑戦し、成長していくことができる。
やがてそれは成果やキャリアとなって、会社にも自分にも返ってきます。

そういった仕事を見つけるのは、難しいのではないでしょうか。

そうですね。“没頭できる仕事を探す”というより、上手く自分の気持ちをコントロールして、仕事を好きになれるモードへ自分をもっていくことが大事だと思います。

どんな仕事でも、面倒な作業やそりの合わない人など、ちょっとしたストレスはあるでしょうが、そこにエネルギーを取られないようにする。ネガティブ要因に敏感だと、生産性のない方へ労力を割いてしまい、キャリアアップからどんどん遠ざかっていきます。

ネガティブには鈍感でいて、ポジティブな方へアンテナを高く立てておくことが、仕事を好きになる秘訣です。

時代を正しく捉えて堅実な経営をしていく

今後の目標を教えてください。

父が築き上げた会社ですから、どう守り次へ継承するかを1番大切にしたいと思っています。

例えば、ピカソ自身が自分の絵を壊しても誰も文句を言いませんが、引き継いだ人が後から描き足すのはリスキーですよね。絵の価値が損なわれる可能性が高い…経営においても同じことが言えます。
その上で、時代の変化に順応しながら、守るべき軸を一貫して継続し、会社を成長させていきたいです。

現在、時代変化によって生まれている課題はありますか?

当社は趣味をテーマとしている会社のため、釣りや登山などが大好きな社員が多いので、趣味と仕事の線引きが難しいのです。

例えば、休日に釣りに行った時も、趣味の延長として新製品のテストをしたりもします。趣味の業界では皆さんそうかもしれませんが、どこまでが仕事で、どこまでがプライベートなのかを明確に区分しにくいのですね。
ユーザー目線で遊んでいるからこそ楽しい発想が生まれてくるものですが、労働基準法等が厳格化する中で、悩ましい問題ではあります。

しかしこれも、好きなことを仕事にできているがゆえの贅沢な悩みですから、感謝しつつ、しっかり解決へ向けていきたいと思います。

編集後記

多くの人が「没頭できる仕事に出会いたい」と思いつつ、その難しさに頭を抱えているのではないかと思います。
酒井氏の「ネガティブなことにエネルギーを取られず、ポジティブな方を向いて働く」というメッセージは、大きなヒントになったのではないでしょうか。
今すぐ仕事を好きになれなくてもいい。まずは、仕事におけるポジティブに着目するところから始めませんか?

編集:佐藤 由理

「株式会社ティムコ」概要

1969年に酒井貞彦氏が創業した、フィッシング用品やアウトドア用品の企画開発、販売、輸出入を手掛ける企業。96年、日本証券業協会に店頭登録(現・東証スタンダード)されて以降、様々な業務を展開してきた。2011年に酒井誠一氏が代表取締役社長に就任。
本社は東京都墨田区にかまえている。2024年5月末時点で、社員数は67名。

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