株式会社和心の創業社長、森 智宏氏にインタビューしました。
「儲からなきゃ面白くない」「日本人が良いと思うものを作る」など…森氏の言葉はどれもシンプルでストレート。力強く、底抜けに明るい。そんな“森氏らしさ全開の経営哲学”をぜひご一読ください。
家系がみんな経営者が多かったというのはあるのですが、特に大きく商売をしていたおじさんに強い憧れがあって。小学校4年生ぐらいから「社長になる」と決めていました。
卒業アルバムには「大企業の社長になる」と書いたし、社長になりたいというより、ずっと「なる」って思っていたんですよね。だから高校の卒業と同時に個人事業主になったし、大学1年生の6月には起業もしました。
でも決まっていたのはそこだけで、どういう起業をするかはなんでもよかったんです。
当時はクロムハーツが流行っていたので、「クロムハーツが和だったらいいよね」ということで和のアクセサリーを始めたり、OEM事業として、他社の下請けでアクセサリーを作ったり…そんなことが好きだったというのと、あとはやっぱり儲かるから経営者をやり続けているのかなと思います。
儲からなきゃ面白くないですからね、起業って。だから“面白いよね”っていうよりは、いつも(理念の下で)“儲かるよね”ってものでやるようにしています。
小・中学校と親やおじさん、おばあちゃんも手伝っていたので、漠然と「なにやっても儲かるんだな」と思ってたんです。
なにをやっても成功すると思っているから、それなら好きなことやいいことをやったほうがいいなと、こだわりはその程度ですね。好きなことやったほうが面白みがあるし、いいことやったほうがみんなから「かっこいいね」って称賛されるじゃないですか(笑)
ひとつ言うなら、圧倒的オンリーワンになれる領域しかやらないことにしています。
例えばGoogleで月間の検索数が1万以上だと敵が多くなりすぎるけれど、1000以下だと需要が少ないから商売にならない。
だから月間検索数が1000から1万のものを選ぶとすると「じゃあ、かんざしだよね」とかって決まります。そこを狙うと圧倒的な強みを持てますね。
うちの商品である“かんざし”でいうなら、デザインのチェックをする時の禁句は「これなら外国人が買いますよ」です。うちは、日本人が“良い”と思うものしか作らないようにしているんです。
外国人と言っても、何人を指しているのかわかりませんよね。台湾と中国と香港でサイズ構成が違うし、彼らの気持ちが分かるわけではないのに、漠然と“外国人向け”に作ろうとすると失敗する。
それに自分たちもパリに行ったら、現地の人が美味しいと言うフランス料理を食べたいじゃないですか。日本人向けに味付けされたフランス料理なんて食べたいと思わないでしょう。バンコクに行ったら、英語や中国語の張り紙があるお店より、現地の人でにぎわっているマッサージ店に入ってみたくなるじゃないですか。
それと同じで、外国人も日本に来てくれた時には“日本人がかっこいいと思うもの”を欲しいはず。だから、日本人をターゲットにプロダクトも店も作るんです。それで外国人が多い場所に店を出すと、日本人の売上だけで損益分岐点を突破して、外国人の売上がそっくりそのまま利益になります。
あとは外国人をターゲットにすると、販売員が商売を軽く見てしまうんです。
「観光客なら売れる」と、ふざけたマインドになっていく。すべてのお客様は平等だし大事なのに…だから、そういうマインドにならないようにという想いもあります。
土産物屋に通ずる原体験が1つあって。
学生時代、自分の家はそんなに金持ちじゃなかったのですが、修学旅行へ行く時に母が1000円のお小遣いをくれて…やっぱり「母さんにお土産買ってあげなきゃ」って思うじゃないですか。でも、土産物屋の人からすごく嫌な態度で接客されたんですよ。
その人にとってはただの修学旅行生のうちの1人だし、1000円程度のお金にならないお客だから、そういう態度だったんでしょう。
でもお客様は、修学旅行に行くのすら大変な家庭だったり、1000円だって頑張って捻出したお小遣いだったりするかもしれないわけで。そこに寄り添えないのはダメだと思いました。
うちのスタッフはみんな、本気で一生懸命やってますよ。あとは押し売りもする(笑)それは商品に自信があるから。
うちより押し売りする販売員はいないと思うけど、その代わりにお客様に寄り添わない人もいない。日本人だろうが外国人だろうが、修学旅行生だって大事なお客様だと、うちのスタッフは心の底から理解して接客している。これで十分だと思います。
まず、向き不向きとか要らない。耐性をつけることが大事だと思います。だから新卒は絶対に厳しい会社がいいし、次に入る会社も若い時なら大変な会社の方がいい。
あとは初めて入るなら“伸びる業界”の方がいいと思います。多くの人がたいてい初めに入った業態で起業するし、起業しないにしても同業界でのほうがステップアップとして転職がしやすいので。
当時なんて資金も10万ぐらいしかないわけですから、失敗したってその程度じゃないですか。勇気もなにも要りませんよ。
とりあえずどうやったら儲けられるかを考えて考えてやりまくって、怖いと思ったことなんて一度もありません。
若造が会社つくりました、潰れましたなんてよくあることですから(笑)誰にも迷惑なんてかけないし、なんてことない。一生懸命やって失敗して、笑う人がいても放っておけばいいし、つまりは起業することにマイナスがなにもないんです。
でも成功して、若くしてお金を持ったらかっこいいし、上場してもかっこいいじゃないですか。すごくいい経験できるし、プラスしかないですよね。
自分は人生100回あったら100回独立します、可及的速やかに。だって経営者はこんなに楽しいんですから。
終始圧倒されっぱなしのインタビュー。一言ひとことにのけぞっていましたが、1番驚いたのは、森氏が“1つもエクスキューズをつけなかった”こと。“自分の信じる道を行く”とはこういうことかと実感しました。
「人生100回あったら100回」、私はなにをするだろう…森氏にとっての“経営者”のようなものに出会えるまで、私も努力し続けたいと思います。
編集:佐藤 由理
1997年、個人事業「かすう工房」として創業。フリーマーケットやロジにて販売事業を、アクセサリーのOEM事業をスタートさせる。99年に初店舗をオープン後、インターネット通販も開始。 2003年、資本金1,000万円で株式会社和心を設立した。その後は静岡・神奈川・京都・名古屋など、全国各地に拠点と店舗を増やしながら成長。18年に東証マザーズへ上場を果たした。